教師のその言葉かけ、大丈夫?///第29回「……」(話してない・話せない)
子どもへの指導は、言葉によって行われます。先生の言葉かけ一つで子どもが変わっていきます。その言葉も効果的なものとそうでないものがあります。
この連載では、先生のちょっと気になる言葉のいくつかについて、解説していきます。ただし、NGワードとして出てくる言葉は「使ってはいけない」ということではありません。
局面に応じては有効な場合もありますし、緊急時などは、言葉を選んでいる余裕はありません。
ぜひ、先生の使っている言葉を意図的・意識的に用いて子どもを育ててほしいと願っています。
1.「……」(話してない・話せない)
新学期、新しい子どもたちとの出会いがあります。もう子どもたちの顔と名前が一致しているころでしょう。
教室にはいろんな子どもがいます。
授業中、活発に発言する子ども。先生の所に寄ってきて、いろいろ質問する子ども。落ち着かなくて立ち歩いたり、騒がしくて注意されたりする子ども。
その中に、1日の中で1度も声を聞かなかった子どもがいませんか?
放課後の教室の1人1人の机を見ながら思い返してみましょう。
「この子、授業中、一度も発表していないな。」「あれ? この子と話をしていないぞ。」「うーん? この子、何をしていたっけ? 思い出せないな。」という子どもはいませんか?
NGワードと聞くと「子どもに言ってはいけない言葉」というイメージになるでしょう。
でも、言葉さえかけることができなかったこともNGワードの1つとして考えてみましょう。
2.問題の所在
先生が子どもに対して意図的に無視することはありませんが、放課後に今日1日を思い返してみたら「あの子どもに声をかけてなかったかも」ということがあるかもしれません。
静かでおとなしい子どもも実は先生と話したがっているはずです。「先生は私のことちゃんと見てくれているのかな?」そんな不安な思いにさせないためにも、全ての子どもとコミュニケーションを取りたいですね。
- どんどん子どもと関わりにくくなってしまう
- 子どもの具体的な姿が見えなくなってしまう
- 先生はひいきすると思わせてしまう
3.こんな指導をしてみましょう
01. どんどん子どもと関わりにくくなってしまう
先生が「話しかけてなかったな」と感じる子どもは、もともと自分から先生や友だちに話しかけることが苦手な子どもです。心の中では「先生と話をしたいな」と思っていても、活発な子どもに交じって先生に声をかけることは至難の業です。
4月当初は「先生に話しかけようかな」と思っていた子どもも、時が経てば経つほど「私には無理」とあきらめたり、「先生は元気な子どもが好きなんだな」と思ったりしてしまいます。
こんな子どもには先生の方から積極的に声をかけてあげましょう。
まずは、先生が話しかけなかった子どもがいなかったかどうか確認しましょう。それには放課後の誰もいなくなった教室でのイメージトレーニングが役立ちます。
1人1人の机を見ながら、その子どもの1日を思い浮かべます。ここで思い浮かばなかった印象の薄い子どもには、次の日に意識して声をかけるようにしてみます。
まずは「あいさつプラス一言」で構いません。
また、言葉によるやりとりが苦手な子どももいます。休み時間や給食中など目と目を見つめ合ってニコッとしたり、低学年であれば頭をポンポンとなでてあげたりすることだけでもOKです。
言葉以外の非言語コミュニケーションも活用して関わりを増やしていきましょう。
02. 子どもの具体的な姿が見えなくなってしまう
話をしていない子どもには、当然、言動に目が行き届きません。本当はとても素敵なふるまいをして、褒めてあげたり、みんなに紹介してあげたりしたいことも見逃してしまいます。
具体的な子どもの姿を知るための方法があります。
休み時間に、学級全員の1人1人が「①だれと ②どこで ③何をして 過ごしているか」を先生の目で見つけて記録してみましょう。月に1度で構いません。バインダーに挟んだ児童名簿に記録していくのです。
すると、子どもの具体的な人間関係が見えてきます。おとなしくて声をかけていなかった子どもが普段どこでだれと過ごしているか見えてきます。
そして、時々休み時間に、話していない子どもの場所に行って先生の姿を見せたり、声をかけたりすることで「先生は私のことも見てくれているんだな」という気持ちにさせることができます。
03. 先生はひいきすると思わせてしまう
元気な子どもや目立つ子どもとばかり話をしていると、「先生はずるい。あの子たちばかり。」「ひいきしている。」と思わせてしまいます。
これは話をしていない子どもに限らず、学級内の他の子どもたちにもひいきしていると思わせてしまうこともあります。
話をする量に偏りが出るのは仕方がありませんが、少なくとも全員に声をかけることによって、ひいきしているという思いにさせることはありません。
ひいきしていると思わせないためにも、話をしていない子どもには、授業中の机間指導の際に、ちょっと一言「いい字で書いているね。」「この考えはだれも思いついていないよ!」と褒めたり、「何か困った所はない?」「ヒントをあげようか?」などアドバイスをしたりするとよいでしょう。
ちなみに、子どもたちは、勉強の邪魔をするような手のかかる子どもや特別な支援が必要な子どもにたくさん関わっても「ひいきしている」とは思わないようです。
4.目指す子どもの姿
子どもの方から先生や友だちに積極的に言葉をかけてくれる姿が望ましいと思いがちです。でも、本当でしょうか。
必要な時に必要なことを話しかけることができれば十分だと思います。おとなしい子どもであっても、先生に相談したいことや伝えなくてはいけないことがあるときに話ができればいいのです。
教室には性格的におとなしかったり、場面緘黙だったりする子どもがいることもあります。どんな子どもがいるにせよ、まずは、先生から積極的に言葉をかけてあげましょう。
その言葉があたたかいものであればあるほど、おとなしい子どもも先生に心を開いてくれます。
*1年以上に渡って長くお読みいただいたこの連載も次回が最終回となります。
最終回もどうぞお楽しみください。
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