教師のその言葉かけ、大丈夫?///第18回「分かった?」
子どもへの指導は、言葉によって行われます。先生の言葉かけ一つで子どもが変わっていきます。その言葉も効果的なものとそうでないものがあります。
この連載では、先生のちょっと気になる言葉のいくつかについて、解説していきます。ただし、NGワードとして出てくる言葉は「使ってはいけない」ということではありません。
局面に応じては有効な場合もありますし、緊急時などは、言葉を選んでいる余裕はありません。
ぜひ、先生の使っている言葉を意図的・意識的に用いて子どもを育ててほしいと願っています。
1.「分かった?」
算数の問題を説明し終えて、教室のみんなに「いいですか? 分かった?」
学習の単元のふりかえりをしていて、最後に「分かりましたか?」
テストを返却して、間違えた問題の復習のときに「分かったかな?」
机間指導をしていて、悩んでいる子どもに「どう? 分かった?」
このように、授業中、学習内容を確認するとき先生の「分かった?」という声をよく耳にします。
2.問題の所在
先生の「分かった?」という言葉には、大きく分けて2種類あります。
1つは、個別の指導をしながら、分からない所を確認しつつ声をかける場合です。これは個別の支援によって学力向上に導く言葉かけです。
もう1つは、授業の一斉指導の際に学級全体に「分かった?」と投げかける場合です。この「分かった?」は、「分かったよね」「分かっておいてね」という意味になってしまいます。この場合には次のような問題が生じます。
- 先生の都合で授業を進めてしまう
- 子どもの質問する機会を奪ってしまう
- 先生の授業力の向上を妨げてしまう
3.こんな指導をしてみましょう
01.先生の都合で授業を進めてしまう
先生の「分かった?」は、暗に「分かったよね」という先生自身が納得するための言葉になりがちです。
賢い子どもの「分かりました」の声に安心し、次の学習内容に移ってしまいます。本当はそこで分かっていない子どもがいたかもしれません。「分かった?」と聞く前に、「隣の人と確認してごらん。」「今、先生が話したまとめを隣の人にしゃべってごらん。」などと確認した方が、分かったかどうかが分かります。
02.子どもの質問する機会を奪ってしまう
先生が「分かった?」と聞いて「分かりません」と言える子どもはあまりいません。分からない子どものほとんどは静かに黙ったままです。それほど「分からない」と言うのは勇気のいることです。
分かった人を確認するよりも「分からないところはないですか?」と問いかける方が、先生に質問しやすくなり、個別の学力保障や学級全体の習熟度アップにつながります。
03.先生の授業力の向上を妨げてしまう
「分かった?」と全体に聞くよりも、それまでに「ここが分かっていないな」「ここをもう少し詳しくしておこう」と見取ることの方が大事です。
分からないことを分かるように、できないことをできるようにすることが先生の仕事です。そのために子どもを観る目を鍛えなくてはいけません。
授業の最後に「確認問題をするけど1人で解くのが不安な人いますか?」などと全員が分かっているかどうかを見極める技を身に付け、授業力を向上させていきましょう。
4.目指す子どもの姿
「学びに向かう力、人間性等」を育むことが今、求められています。そのために「自己調整力」という言葉がキーワードになっています。自ら学習をコントロールし、課題の解決や目標の達成に向かう力です。これからの時代に向け、子ども自身が「問い」を見出し、課題を追究してみたいと思わせることが先生の役目ともいえます。
「分かった?」という言葉が出るときは、知識を伝達し、教えようとする強い意識が働いている場合です。教えることも大事な仕事です。
一方で「分からないところはない?」「自分で解ける?」「分からなかったら聞きにおいで。」と聞き、子どもから「教えて。」「ここはどうすればいいの?」と聞いたり、自分で解決するための方法を探したりするように仕向け、子ども自ら学習をコントロールする力もつけていきましょう。
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