教師のその言葉かけ、大丈夫?///第30回(最終回)「子どもの実態に合わせて」

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日本標準

子どもへの指導は、言葉によって行われます。先生の言葉かけ一つで子どもが変わっていきます。その言葉も効果的なものとそうでないものがあります。

この連載では、先生のちょっと気になる言葉のいくつかについて、解説していきます。ただし、NGワードとして出てくる言葉は「使ってはいけない」ということではありません。

局面に応じては有効な場合もありますし、緊急時などは、言葉を選んでいる余裕はありません。

ぜひ、先生の使っている言葉を意図的・意識的に用いて子どもを育ててほしいと願っています。

1.「子どもの実態に合わせて」

校内研究のテーマを決める職員会議の場面。新しい提案をした際にだれかが一言。
「子どもの実態に合っているんですか?」

学習発表会や音楽会などで行う演目を決める時に相談していてこの一言。
「子どもの実態に合わせたものにしましょう。」

教職員みんなで何かを1つに決める際によく使われる言葉です。

最終回の今回は、子どもへのNGワードではなく、教職員の間で交わされるNGワードについて考えてみましょう。

2.問題の所在

「子どもの実態」とは一体何でしょう? 

今、現在の子どもたちの状態を示す言葉として使われます。

子どもの現状を見極めておくことは大切です。しかし、現状から少しでも理想像に向けてレベルアップさせていくのが教師の仕事です。教師の理想像なくして子どもの成長はありません。

「子どもの実態に合わせて…」と言ってしまうことによって、もっと大切な教師の「こんな子どもに育てたい。」という願いを打ち消してしまうことに問題があります。

 

  1. 子どもの現状以上に育てる事が出来ない
  2. 教師が楽をしてしまう
  3. 理想像を理想のままにしてしまう

3.こんな指導をしてみましょう

01. 子どもの現状以上に育てる事が出来ない

子どもを育てるためには、教師が描く理想像が欠かせません。子どもの現状と理想像の差があるからこそ、そこに指導が生まれます。

それを「子どもの実態に合わせたものに」と言ってしまうと、一番大切な理想像が低く設定されてしまいます。

少しずつ風船を膨らませるように子どもの力を育てていこうとする意識は分かりますが、教師の理想像以上に子どもは育ちません。むしろ理想像まで届かないことがほとんどです。

ですから、子どもの実態に合わせるよりも、先生が「こんな子どもに育てたい。」とか「私の理想の学級はこんな学級!」と高い理想の子ども像を具体的に描き、少しでも理想像に近づけようと取り組むことで子どもたちがさらに伸びていきます。

 

02. 教師が楽をしてしまう

「子どもの実態に合わせて…」と言うときは、提案されたテーマや演目に対する否定的な意見が暗に含まれている場合があります。

「子どもの実態に合わせる」こと自体は大切なことなので、否定しようがありません。

一方で子どもの実態に合わせることは、普段通りの指導でいいので教師にとっては楽です。理想像に向けて指導を工夫するほうがよっぽど大変ですし、子どもたちもいつも通りに指導してもらった方が楽です。

ただ、先生の指導によって子どもがどんどん伸びていってくれる方がよっぽど楽しくて、やりがいをもって仕事に臨めると思いませんか? 

 

03. 理想像を理想のままにしてしまう

教師が子どもの理想の姿を願っていたとしても、「理想は分かるけど、子どもの実態がこうだから…」「子どもの実態には合っていないから、それは難しいと思います。」と言ってしまうと、よりよく指導しようとする思考が停止してしまいます。

それでは子どもたちの現状維持に他なりません。

もちろん現状がすばらしい子どもたちならいいのですが、より高い姿に子どもを育てていく(「人格の完成を目指す」)ことが先生の使命です。
先生自身が「こんなことができる子どもに育てたい。」「学習発表会は、この歌(曲・劇)でこんな子どもに育てたい!」という理想像が高ければ高いほど、子どもたちは伸びていくものです。

4.目指す子どもの姿

「子ども中心主義」「教師中心主義」という言葉があります。
「子ども中心」というと何だか子どもに寄り添って優しいイメージがあり、「教師中心」というと命令・指示で厳しいイメージを抱きがちです。

でも考えてみましょう。そもそも学校は先生が子どもに何かを教える場所です。子どもが主体的に学んでいる姿があったとしても、それは先生が主体的に学ぶ方法を子どもに指導した結果です。

 ですから原則は、先生が中心となって指導することの方が先なのです。まずは先生自身が理想とする具体的な子ども像を描くことが大事です。

きっと先生になったばかりのころは「こんな子どもを育てたい!」と夢と希望があったはずです。子どもには私たちが思っている以上に伸びていく可能性があります。

今一度、先生になった初心に立ち返り、あのころの理想を思い描いて子どもたちの指導に当たってみて下さい。それが「先生」という仕事の楽しさ、おもしろさにつながっていくはずです。

 

*連載は今回で最終回となります。
 連載に関わっていただいた多くの方々に記して感謝申し上げます。
 今日までご覧いただきました皆様、ありがとうございました。
                                    広山隆行

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