教師のその言葉かけ、大丈夫?///第27回「できた人! 分かった人!」
子どもへの指導は、言葉によって行われます。先生の言葉かけ一つで子どもが変わっていきます。その言葉も効果的なものとそうでないものがあります。
この連載では、先生のちょっと気になる言葉のいくつかについて、解説していきます。ただし、NGワードとして出てくる言葉は「使ってはいけない」ということではありません。
局面に応じては有効な場合もありますし、緊急時などは、言葉を選んでいる余裕はありません。
ぜひ、先生の使っている言葉を意図的・意識的に用いて子どもを育ててほしいと願っています。
1.「できた人! 分かった人!」
授業中、先生が算数の問題を黒板に書いてノートに解かせたり、プリントをさせたりした後の場面です。
「この問題、できた人!」「分かった人、いますか?」と挙手をさせる場面を目にします。先生の発問や指示に対して、同じように「解けた人」「考えた人」「できる人」「分かる人」という言い方で聞く場合もあります。
授業は先生のこの言葉かけによって「挙手-指名」で進んでいることが多いのではないでしょうか。
今回は「できた人! 分かった人」という言葉かけを、新学期の授業が始まるにあたって考えてみようと思います。
2.問題の所在
今回は本質的な話をします。「できた人!」「分かった人!」という言葉自体がNGというわけではありません。ただし、この言葉を意識して使うことで子どもの見方(観方)や授業の考え方が変わります。
先生の発問の後に「できた人!」「分かった人!」と聞きながら授業を進めると、子どもたちが元気よくハイハイ!と挙手します。その子どもを指名しながら授業を進めると活発な授業の雰囲気になります。
しかし、実は一部のできる子・分かる子だけで授業が進んでいて、「できない子」「分からない子」は置き去りにしていることに気付かないことがあります。
本来は「できない子」「分からない子」にこそ先生は注目し、声をかけていかなくてはいけません。
- できない子・分からない子をそのままにしてしまう
- できる子・分かる子に優越感を持たせてしまう
- 学級の中に序列が生まれてしまう
3.こんな指導をしてみましょう
01. できない子・分からない子をそのままにしてしまう
「できた人!」「分かった人!」と聞いてしまうと、まだできていない子どもや分からなかった子どもを置き去りにしてしまいます。できなかった子どもや分からなかった子どもは、授業についていくことができません。
子どもによっては「先生は頭のいい子ばかり相手にするんだな。」「分からない私のことはどうでもいいんだろうな。」と思わせてしまうこともあります。
学校は、できないことをできるように、分からないことを分かるようにする場所です。「分かった人、手を挙げて。」と言うよりも「まだできていない人はいますか?」と聞いて「あと、どのくらい時間がほしい?」と全員ができるのを確認しましょう。
また、「分からない人いますか?」と聞いて、手を挙げる子どもがいたら「正直でいいね。」とフォローしつつ、「自分で解けそう? 教えようか?」「ヒントをあげようか?」などと全員を授業に参加させましょう。
02. できる子・分かる子に優越感を持たせてしまう
先生の発問や指示に対して、すぐにできた子どもや分かった子どもは、他の子どもより早くできたことに対して満足感を得ます。先生もそのことに対して褒めることが多くなります。
このこと自体は悪くありません。問題は、先生の意識が早くできたり分かったりする子どもに偏ることです。
いわゆる賢い子どもや活発な子どもを相手に授業が進んでいくと、「私は他の人よりも賢いんだ。」と変な優越感を与えることになります。加えて「自分だけできればいい。」「勉強が分かる人だけできていればいい。」という考えになりがちです。
「できた人は、近くの人が困っていないか見回してね。」「教えてほしいって言ったら、ヒントを言ってもいいよ。」などと声をかけましょう。
03. 学級の中に序列が生まれてしまう
4月の子どもたちは心機一転「今年こそは新しい自分になろう!」と思っています。
それなのに先生が「できる子・分かる子」を中心に授業を進めていくと、「できない子・分からない子」は「今年も変われないな。」「もういいや。」とあきらめモードになってしまいます。
そのうち「できる人たちに任せておこう。」「静かに黙って座っておけばいい。」と考えるようになり、「できる子・分かる子」たちとの授業への意欲の差が生まれ、学級の中に序列が生まれ始めます。
学級の生活に満足しない子どもは、おとなしい子どもであれば不登校傾向に、攻撃的な子どもであれば、いじめや暴力的な行動が表れてきます。
授業中は、「分からない人は分かっている人に聞いていいですよ。」「分かった人は、分からなかった人が分かるように説明できる力をつけてね。」など、できる子・分かる子とできない子・分からない子の関わりが生まれるような言葉かけをしていきましょう。
4月の授業では、学級づくりも意識しながら、子どもたちの関係づくりにも意識することが大切です。
4.目指す子どもの姿
今回、目指す子どもの姿は、2つあります。
1つは、「みんなができる姿」です。先生側の視点にすると「みんなをできるようにする」ということです。これは先生側の目指す姿でもあります。学校にはいろんな子どもが来ます。現実的には難しいかもしれませんが、学級の子どもたちを1人残らずできるようにする、落ちこぼさない、という心意気をもっていることが大切です。
もう1つは、「みんなでできるようにする姿」です。これは子どもの自主・自立の姿です。4月は先生が教えていたことも、1年後の3月には学級のみんなが自分たちでできるようにするということです。
さあ、いよいよ新学期が始まります。まずは学級の子どもたち1人1人に毎日言葉をかけてみましょう。
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