教師のその言葉かけ、大丈夫?///第28回「コラ!(怒鳴り声)」

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日本標準

子どもへの指導は、言葉によって行われます。先生の言葉かけ一つで子どもが変わっていきます。その言葉も効果的なものとそうでないものがあります。

この連載では、先生のちょっと気になる言葉のいくつかについて、解説していきます。ただし、NGワードとして出てくる言葉は「使ってはいけない」ということではありません。

局面に応じては有効な場合もありますし、緊急時などは、言葉を選んでいる余裕はありません。

ぜひ、先生の使っている言葉を意図的・意識的に用いて子どもを育ててほしいと願っています。

1.「コラ!(怒鳴り声)」

何度も同じ失敗を繰り返して言うことを聞かない時。
教室がざわざわしていて先生の話を聞いていない時。
友だちを泣かせてしまったにもかかわらず反省の色が見えない時。
つい大きな声で怒鳴ってしまうことってありませんか?

「怒る」「叱る」という言葉の意味については別の機会に譲るとして、今回は「コラ!」に代表される大きな声を出して指導することについて考えてみましょう。

2.問題の所在

4月の最初から大きな声を出して怒鳴ることは少ないことと思います。しかし1週間経ち、1か月経ち学校生活に慣れてくると、だんだん子どもたちは本性を表します。

そんな時につい大きな声で怒鳴るような指導をしてしまいます。「コラ!」に限らず大きな声で怒鳴ることによって、すぐに子どもは黙って姿勢を正してくれるので即効性のある指導に思えます。

しかし、実際は子どもの心には響いていないどころか、以下のように悪影響を及ぼしてしまうことがあります。

 

  1. 子どもを委縮させてしまう
  2. 子どもが反抗的になる
  3. 子どもとの心理的な距離が離れてしまう

3.こんな指導をしてみましょう

01. 子どもを委縮させてしまう

大きな声で怒鳴られた場合、それが恐怖心や怯えといった感情となり、その後の活動を委縮させてしまいます。

先生の顔色をうかがいながら行動するので、おとなしく目立たないようになります。また、怒鳴る指導を続けることによって「自分はダメなんだ。」という気持ちにさせ、自己肯定感を下げてしまいます。

大きな声で怒鳴るよりも「いいかい? 次はこんな風にできるかな。」と今後の指導を具体的に示したり、短い言葉で繰り返し指導したりするほうが長期的に見れば子どもを育てていくことになります。

 

02. 子どもが反抗的になる

子どもがやんちゃな行動をした後などに怒鳴って指導した場合、子どもは怒鳴られたことだけが印象に残ってしまいます。その後の指導する言葉は耳に入らず、反省よりも怒鳴られたことに対する反抗心が芽生えます。

子どもによっては、不適切な行動をとることによって怒鳴ってもらえるだけの注目を浴びることができると考える子どもも出てきます。

また、下級生に対して先生の指導を真似して、怒鳴ったり恫喝したりすることもあります。

反抗的な態度をとりそうな子どもに対しては怒鳴る前に、「どうしたの? 何か理由があったの?」「先生に伝えておきたいことがありますか?」と子どもなりの理由(言い訳)を聞いておきます。その上で、今後の適切な行動について話してあげましょう。

 

03. 子どもたちとの心理的な距離が離れてしまう

先生が大きな声で怒鳴っている声は、該当の子どもだけでなく、その他の学級みんなにも聞こえます。すると「01」で書いたような先生への恐怖や恐れが関係のない子どもにも及ぶ恐れがあります。

また、怒鳴られた子どもは学級内でも目立つため、他の子どもからその子どもへの風当たりも強くなることがあります。結果として学級内の雰囲気が悪くなり、人間関係がぎくしゃくしていきます。

どうしても厳しく指導をしなくてはいけないのなら、「ちょっとおいで。」と職員室などの別室で指導するとよいでしょう。また、怒鳴るという声に頼るだけでなく、真剣な表情を作ったり、目と目を合わせて話をしたりという工夫も考えてみましょう。

4.目指す子どもの姿

そもそもどうしても大きな声を出して指導しないといけない局面はあまりありません。

あるとすれば、命に関わる問題や地震・火事といった非常変災などの緊急を要する局面です。

そうでなければ、冷静かつ丁寧に繰り返し話をしていくのが原則です。

先生が怒鳴るような大きい声を出す時は、大抵先生自身が興奮して冷静になっていない時が多いのではないでしょうか。先生自身が子どもと同じ立場でぶつかり合い、摩擦が生まれていると捉えましょう。

「指導」と言う言葉があります。子どもの少し上に立ち、進むべき方角を指さし導くことです。また、「Understand」(理解する)という言葉があります。子どもの下(under)に立ち(stand)、その心を支えてみましょう。

怒鳴りたくなった時は、子どもと同じレベルで摩擦が生まれているのかもしれません。

心の中でちょっとでも子どもの上か下に立つことで、摩擦を避け客観的に子どもに言葉をかけることができます。

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