教師のその言葉かけ、大丈夫?///第8回「また忘れたの!?連絡帳、見たんですか?」
子どもへの指導は、言葉によって行われます。先生の言葉かけ一つで子どもが変わっていきます。その言葉も効果的なものとそうでないものがあります。
この連載では、先生のちょっと気になる言葉のいくつかについて、解説していきます。ただし、NGワードとして出てくる言葉は「使ってはいけない」ということではありません。
局面に応じては有効な場合もありますし、緊急時などは、言葉を選んでいる余裕はありません。
ぜひ、先生の使っている言葉を意図的・意識的に用いて子どもを育ててほしいと願っています。
1.「また忘れたの!?連絡帳、見たんですか?」
授業中「コンパスを出しましょう」「円を書いてみましょう」と話した矢先、「先生、忘れました」という子どもが出てきます。
あ!いつも忘れてしまう〇〇さん…。「また忘れたの!」とつい一言。
さらに子どもの様子を見て回っていると、ぼーっと何もせずにいる子どもがいます。「どうしたの?」と聞くと「忘れました」。
ここで一言「またですか!?この前も忘れたでしょ」「連絡帳、見たんですか?」という言葉を言ってしまうことはありませんか。
忘れ物をする子どもは、大抵同じ子どもです。毎回忘れ物をしていると、つい「また忘れたの!?連絡帳を見たんですか?」と言ってしまいがちです。
連絡帳にはちゃんと持ってくるものを書かせて印鑑も押したのに。
忘れ物には、コンパスや分度器、習字道具・絵の具道具といった物の類と、宿題のような時間をかけて取り組む作業的なものがあります。
ここでは学習用具などの忘れ物を中心に考えてみます。
2.問題の所在
忘れ物をするということは、学習用具であれば、子どもの学習が遅れることになります。書類や教材の注文書であれば、学級や学年・学校全体に支障をきたすこともあります。
忘れ物をしないということは、先生にとってスムーズに事が運ぶことにつながり、余計なストレスも解消されることになります。
忘れ物をいつもしてしまうことに対しては次のような原因があります。
- そもそも家に帰っても覚えていない。連絡帳を見ない。
- 「準備は当日でいいや」「まだ時間がある」と思ってしまう。
- 学習用具の重要性に気付かない。感じない。
- 家庭環境が準備物を準備する状況にない。
などがあります。
3.こんな指導をしてみましょう
忘れ物をしてしまう前に、先生が忘れ物をしないための手立てや指導をしておきましょう。
01.家に帰ってすぐ気付く手立て
家に帰ってすぐに準備物に気付く手立てを学校でしておきます。
例えば、次のようなことをして、連絡帳に目立つような意識づけをしておきます。
①連絡帳に赤鉛筆で書かせる。
②連絡帳に書いた、忘れてはいけない大事なものに先生が四角囲みや花丸印などをつける。
③カードや付箋に先生が書いて連絡帳やランドセルの内側に貼っておく。
02.3日前や前の週には事前にそろえておく
「来週はコンパスを使いますので今週中に持ってきておいてください」
「もう持ってきている人は手を挙げて下さい。早いですね。まだの人は明後日使うので用意をしておきましょう。」
などと、使う日よりも早くそろっているかどうかを確認します。
03.使っているイメージを語る
「来週は、コンパスを使ってきれいな円をたくさん書くよ。円を重ねてどんな模様ができるか楽しみだね」などと、授業でその道具を使っているイメージを語ります。
道具を使って何をするのかイメージができ、楽しみになると忘れません。
遠足の持ち物など楽しみなものは忘れないのと一緒です。
04.事前に十分な数を教師が準備しておく
学習道具がそろわないと、後で個別の指導をしなくてはいけなくなります。ですから、忘れたものは仕方がないと割り切って、貸してあげましょう。
ただし、「仕方ないなぁ。特別だよ」「これは先生用の1万円もする高級コンパスです。それを貸してあげよう(笑)」と冗談を言いながら貸してあげます。
その際、「今、机にもどって赤鉛筆で連絡帳にコンパスって書いて下さい」と指示します。子どもによっては道具類が経済的な理由によってそろいにくい場合もあります。
子どももさすがに毎回借りていると「もってこようかな」と感じるはずです。
4.目指す子どもの姿
子どもが自分で準備をし、忘れずに学習に臨むことが1番です。でも、つい忘れてしまうことはあるものです。
その時にどうするのか、の方が大事です。
何も言わず黙っているのが一番よくありません。「先生、忘れました」と自分から授業前に言えたら、①兄弟・友だちに借りる、②先生から借りる、など対処できます。
先生が心掛けることは、忘れ物のない状態にして授業に入ることです。
特に専科の先生に入ってもらう授業では、事前に持ち物を子どもと共に確認し、迷惑がかからないようにしておきましょう。
なお、いろんな手立てをしても忘れ物をしてしまう場合は、特別な支援が必要な時があります。特別支援コーディネーターなどと相談することも大切です。
忘れ物を繰り返す子どもの指導については『子どもが変わる局面指導Ⅱ』(日本標準)にも複数の実践が載っています。
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