教師のその言葉かけ、大丈夫?///第26回「勉強しなさい!」
子どもへの指導は、言葉によって行われます。先生の言葉かけ一つで子どもが変わっていきます。その言葉も効果的なものとそうでないものがあります。
この連載では、先生のちょっと気になる言葉のいくつかについて、解説していきます。ただし、NGワードとして出てくる言葉は「使ってはいけない」ということではありません。
局面に応じては有効な場合もありますし、緊急時などは、言葉を選んでいる余裕はありません。
ぜひ、先生の使っている言葉を意図的・意識的に用いて子どもを育ててほしいと願っています。
1.「勉強しなさい!」
テストの点数が今一つ。そんな子どもや学級のみんなに「ちゃんと勉強したの? お家でもっと勉強しなさい!」
宿題にしていた漢字練習や計算練習をなかなかやって来ません。そんな時に一言。「もっと勉強しておいで!」
授業中、手悪さや落書きをしていて授業に集中していない子どもに一言。「しっかり勉強しなさい!」
学力や学習態度が不十分な子どもや学級の様子に対して、先生がつい言ってしまう言葉です。
2.問題の所在
子どもたちに「学校って何をするところ?」と聞くと、例外なく「勉強するところ」と答えます。その勉強を教えるのが先生の仕事です。
ですから先生が「勉強しなさい!」と子どもたちに言うこと自体おかしな話です。ましてや学校が終わった後、放課後や家庭で「勉強してくるように」と言うのも本来は変な話です。
子どもたちは学校に来て、できなかったことができるようになってお家に帰っていくのです。「勉強しなさい!」と言う前に、全員が学校でできるように考え、工夫することのほうが大切です。
- 勉強への意欲が低下する
- 自己肯定感を下げてしまう
- 主体性がなくなる
3.こんな指導をしてみましょう
01. 勉強への意欲が低下する
子どもは不思議と「勉強しなさい!」と言われると、したくなくなります。心理学用語ではブーメラン効果とも言い、説得すればするほど逆効果になることを指します。
「勉強しなさい!」と言った後、子どもから「しようと思っていたのに!」「言われなくても分かっている!」と声に出さずとも反発されていることのほうが多いです。
それよりも、勉強する姿を見た時に「しっかり勉強できたね。」「この調子で勉強続けてごらん。力がどんどんついていくよ。」と、褒めてあげるほうが効果的です。
02. 自己肯定感を下げてしまう
勉強が苦手な子どもにとって「勉強しなさい!」という言葉は、「私は勉強ができない」「ぼくは頭が悪い」という思いにさせることがあります。そうした子どもには「どうせ勉強しても分からないもん!」「勉強したってムダ!」と、自己肯定感を低くさせることになります。
それよりも学習に困っていそうな子どもには、「今、勉強で困っているところない?」「宿題は一人でできる? 分からなかったら教えてあげるよ。」と伝えたり、休み時間や放課後に補習を行ってできるようにしてあげたりするほうが大切です。
03. 主体性がなくなる
「勉強しなさい!」と言った後、休み時間や放課後に勉強していたり、「先生、お家で30分机に座りました。」と言われたりすると、うれしくなったり安心したりしてしまいます。でもそれは「勉強しなさい」と言われないと勉強しない状態を作っているのかもしれません。
これが習慣化すると「言われたから勉強した。」という受け身の姿勢になり、勉強は「先生のため、親のため」という意識にさせていくかもしれません。「勉強している」といっても、机に座っているだけや形式的に勉強することになり、本来の勉強の楽しさや力をつけるためのものではなくなってしまいます。
子どもは好きなことは夢中になり時間を忘れてやり続けます。「勉強しなさい!」と言うよりも、勉強以外のこと(例えば実技教科や学活・学校行事など)について一生懸命取り組ませるほうが、後から自然と勉強もしようと考えるものです。
4.目指す子どもの姿
理想とする子どもの姿は、授業中に勉強する構えができていて、かつ学習内容を理解し、家庭でも勉強の習慣が身についていることです。ただ、そんな子どもであれば、もう学校で先生に教えてもらう必要はありません。
学校での先生の役割は、学習内容を教えるとともに、勉強の楽しさを教える事でもあります。新しい知識を得たり、それを元に考えたりすることは楽しいことです。勉強の楽しさを知れば、自然と自主的に勉強するものです。
「勉強しなさい!」という前に、先生自身が教材研究を行い「勉強したい!」と思わせる授業をすることこそ、目指す子どもの姿への第一歩です。
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