教師のその言葉かけ、大丈夫?///第22回「やる気を出しなさい!」

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日本標準

子どもへの指導は、言葉によって行われます。先生の言葉かけ一つで子どもが変わっていきます。その言葉も効果的なものとそうでないものがあります。

この連載では、先生のちょっと気になる言葉のいくつかについて、解説していきます。ただし、NGワードとして出てくる言葉は「使ってはいけない」ということではありません。

局面に応じては有効な場合もありますし、緊急時などは、言葉を選んでいる余裕はありません。

ぜひ、先生の使っている言葉を意図的・意識的に用いて子どもを育ててほしいと願っています。

1.「やる気を出しなさい!」

音楽で歌を歌う声が小さかった時や体育の運動できびきびと動けなかった時にこの一言。
自習の時間にドリルの課題が思ったほど進んでいなかった時にこの一言。
6年生を送る会の出し物のリハーサルで今一つ集中していないと感じた時についこんな一言。

「やる気を出しなさい!」「やる気はあるんですか?」

2.問題の所在

「やる気」とは一体何でしょう? 先生の「やる気を出しなさい」という言葉の正体は、子どもの態度面のことです。

先生の目に映る子どもの姿が一生懸命やっているように見えないためにこの言葉が出てしまいます。たいていの先生は目に見える一生懸命な子どもに好感をもちます。そのためおとなしめの子どもや集中力を欠いているように見える子どもに対して、ついこの言葉を言ってしまいます。

でも、子どもの心の中は見えません。本当は今の姿が精一杯の力を出している状態なのかもしれません。

「やる気」の指導は子どもの心の状態によっても変わります。ですから学級や学年全体に声をかけても心に響く度合いは1人1人バラバラです。

 

  1. 自己肯定感を下げてしまう
  2. 委縮させてしまう
  3. 受け身にさせてしまう

3.こんな指導をしてみましょう

01.自己肯定感を下げてしまう

おとなしめの子どもの中には、すでに精一杯頑張っている子どもがいます。そんな子どもにとっては「もう十分やる気を出しているのに……」「これでもダメなの?」「どうすればいいの?」と思わせてしまいます。

まずは「今、どれだけ力が出せている?」「今の姿は5段階で何点?」と自己評価させます。

また、6年生を送る会などの学校行事で学年集団に「やる気を出しなさい!」と発破をかけて高めたい場合は、事前に1人1人の伸びを見てプラスの言葉かけを十分にしてあることが前提になります。

 

02.委縮させてしまう

「やる気を出しなさい!」と言われても、先生の求める「やる気」が見えないところにこの言葉の難しさがあります。

子どもからしてみれば、やる気が見えなかった自分に対して怒られていると思い、委縮してしまいます。

そうさせないためには、「体育館への移動は静かに来てほしいな。足音一つ出さないつもりで動いてごらん。」「今の歌声よりも、もっと体育館のすみっこまで届かせるように歌ってごらん。そのためには吸い込んだ息を全部出しきってごらん。」のように、先生の求める行為像とそこに至る方法を伝えてあげましょう。

 

03.受け身にさせてしまう

音楽会や運動会の応援合戦などでの「やる気を出しなさい!」という叱咤激励は子どもを緊張状態にさせます。

さらに先生のこの言葉によって、子どもは「やらされている」「させられている」という受け身の気持ちになってしまいます。

子どものベストパフォーマンスが出るのは、心身ともにリラックスしている状態の時です。むしろ「君たちならもっとできるよ。」「全力を出し切ることが大事だよ。」といったプラスの言葉かけの方が有効です。

4.目指す子どもの姿

普段から子どもがやる気いっぱいで活動している姿は理想的です。

ただ、これはあくまで教師から見た主観です。やる気を心に秘めている子どももいますし、頭の中でいっぱい考えている子どももいます。もしもやる気ある姿を求めるのなら、行為・行動で示すことの大切さを伝えることです。

ゴミを拾う、静かに教室移動する、リレーや徒競走では笑顔にならず真面目な顔をする、といった目に見える行為・行動になるように指導します。

「やる気を出しなさい!」と言われて「やる気」(行為・行動)がすぐに変わる子どもは多くありません。先生自身が、子どものやる気が出ている理想像を描き、そこに向けてステップアップできるような言葉かけを行うよう心がけましょう。

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