教師のその言葉かけ、大丈夫?///第10回「去年の〇年生はよかったのに」

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日本標準

子どもへの指導は、言葉によって行われます。先生の言葉かけ一つで子どもが変わっていきます。その言葉も効果的なものとそうでないものがあります。

この連載では、先生のちょっと気になる言葉のいくつかについて、解説していきます。ただし、NGワードとして出てくる言葉は「使ってはいけない」ということではありません。

局面に応じては有効な場合もありますし、緊急時などは、言葉を選んでいる余裕はありません。

ぜひ、先生の使っている言葉を意図的・意識的に用いて子どもを育ててほしいと願っています。

1.去年の〇年生はよかったのに

1学期が終わるころになれば、その学年のカラーが決まってきます。年によってそのカラーは違いがあります。

前の年よりも落ち着いていい感じの学年であれば、褒めることが多くなります。

一方で、学習の成績が伸びない、授業中に私語や離席など集中できない子どもが多い、登下校の様子について苦情が来る、など課題山積の場合、つい前の年と比べがちです。

特に前の学年が落ち着いてよい印象があった場合には、子どもたちにこの言葉を言ってしまいます。

「去年の〇年生はよかったのに」「今年の〇年生は…」と。

 

2.問題の所在

教師経験が長くなってくると「この学年はこういうもの」というイメージができてきます。

そんな時に「去年の〇年生はよかったのに!」「去年と比べて…」という言葉が出てきます。

その言葉が出てしまう問題の所在として以下のようなものがあります。

 

  1. 子ども自身がその学年相応のモデルに気付いていない
  2. 子どもに不信感をもたせていることに気付かない
  3. 先生自身がこれまでのよき思い出を捨てきれずにいる

 

3.こんな指導をしてみましょう

01.今が指導のチャンス

「去年の〇年生は…」と言ってしまいそうな時は、子どもの不十分さに先生自身が気付いている時です。

言葉に出すのは心の中に一旦留め、気になる部分を1つずつ指導していきましょう。

比べたくなる局面は、重要な局面でもあります。

子どもにとっては、当然ですが、その学年は初めて経験する学年です。子ども自身は比較する対象がありません。

ですから、事前に「今年はクラス替えがありますね。4年生最後のお楽しみ会で、先生の力を借りずに相談してできるかな?」という目標と期待感をもたせます。

また、「授業中に姿勢よく話が聞けるのが〇年生の力です。今はまだ無理かもしれませんが、3月にはできたらいいね。」と学年のモデルとなる姿を話しておくとよいでしょう。

「あっ、もう今できている人もいますね。」「さすが〇年生!」と褒めることも大切です。

 

02.今年の〇年生「も」

先生が「去年の〇年生はよかったのに」「今年は…」と話すことで、子どもたちは「この先生は僕たちよりも去年の方が好きだったんだ」「私たちのことはあまりよく思っていないんだ」というマイナスの印象を与えてしまうことになります。

過去の学年と比べる時は、「よかったところ」「同じところ」もあるはずです。そこを伝えましょう。

「今年も友達の発表に対して反応がいいのはいい所ですね。この学校の伝統ですね。その後、先生が話をしたらすぐに静かにすると、もっとよくなりますね。」などと話します。

「今年もいいね」というのは子どもたちに安心感を与えます。そして先輩を乗り越えようとする意欲も湧き立たせます。

あえて、「今年は」を「今年も」になる場面をみつけ、伝えていきましょう。

 

03.今年は今年

過去の居心地のよかった学年のことが先生自身の理想像となり、そこと比べた相対的な言葉かけ(否定的な言葉かけ)が増えてしまいます。

理想像をもつことは大切ですが、毎年子どもたちは違うものと捉え、現状からどれだけレベルアップさせるかという視点で関わっていきましょう。

すると「できるようになったね」「上手になったね」というプラスの言葉かけが増えていき、結果としてその年ならではの学年になるはずです。

「今年は今年」と割り切り、「指導することが教師の仕事」と捉えましょう。くれぐれも、愚痴にならないように。

 

4.目指す子どもの姿

子どもたちは精一杯その学年を生きています。

それを過去の学年と比べているのは先生だけです。

理想像は上限がありません。かといって、理想像がないと指導ができません。

子どもに望む理想像は、時代に関わらず「自主自立」といってもいいでしょう。

夏休みなどの長期休みの間、子どもたちの現状を見つめ直し、どこから手を付けていくのかを考えることが理想の子どもの姿に導くことにつながります。

 

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