教師のその言葉かけ、大丈夫?///第9回「ちゃんとしなさい!」
子どもへの指導は、言葉によって行われます。先生の言葉かけ一つで子どもが変わっていきます。その言葉も効果的なものとそうでないものがあります。
この連載では、先生のちょっと気になる言葉のいくつかについて、解説していきます。ただし、NGワードとして出てくる言葉は「使ってはいけない」ということではありません。
局面に応じては有効な場合もありますし、緊急時などは、言葉を選んでいる余裕はありません。
ぜひ、先生の使っている言葉を意図的・意識的に用いて子どもを育ててほしいと願っています。
1.ちゃんとしなさい!
授業中に姿勢がくずれていたり、服装がだらしない姿をみつけたりした時に、ちゃんとしなさい!
片付けや整理整頓ができていなくて、ちゃんとしなさい!
ふざけてさわいでいる様子に対して、ちゃんとしなさい!
子どもたちをとっさに指導しようとする場面でよく耳にする言葉です。
2.問題の所在
「ちゃんとしなさい!」という言葉は、子どもに指導する言葉としては、とても曖昧でぼんやりした指示になります。
「ちゃんとしなさい!」と言われて、すぐに自分を正せるのならいいのですが、大抵の子どもは同じ言動を繰り返すことになります。
その理由としては次のような子どもの心持があります。
- 「ちゃんと」と言われても、子どもは「ぼくはちゃんとしているのに」と思っていて教師の願いが伝わっていない。
「ちゃんとする」のがどういう状態なのか、子ども自身が分かっていない。 - 「ちゃんとする」ために何をどうすればいいのか、分からない。
- 先生の口癖のようになってしまっている。
「ちゃんと」という言葉を辞書(『新明解』)で引くと、「期待されている基準から外れていないことを表す」とあります。
教師の期待している基準がきちんと子どもに伝わっていなければ、どんなに「ちゃんとしなさい!」と言っても効果は薄くなります。
3.こんな指導をしてみましょう
「ちゃんとしなさい!」というNGワードを言ってしまいそうなときは、次のような言葉に言いかえてみましょう。
01.こういうことが「ちゃんとしていること」ですよ
「ちゃんとしなさい!」と言った後、「ちゃんとしているよ!」と言い返してくる子どもがいます。
これは先生と子どもの理想像にズレがある証拠です。そこで明確な指示で教師の願いを伝えます。
- 次の授業を机の上に出してから遊びに行くことがちゃんとしていることですよ。
- 上靴のかかとはふまないんですよ。
- 廊下は異動するための場所ですから、走ったり大騒ぎしないんですよ。まだ授業をしている教室もありますからね。
と具体的に指導した後に、「これがちゃんとしているってことですよ。」と一言添えます。
これでやっと、ちゃんとした状態が理解できます。
02.一緒にやろう
子どもが「ちゃんと」する状態が分かっていなければ、教えてあげましょう。
「ちゃんと」するためにどうすればいいのか分からない子どもには先生が一緒になってやってあげましょう。
- 一緒に机の中を整えますよ。こうするときれいでしょ?
- 自分で制服のシャツがズボンの中に入れることができますか?
- 腰の骨を立ててごらん。姿勢がよくなるでしょう?
このように、先生が一緒にやってあげることで、どうすればいいのか分かります。
特に準備や片付けなどは時間や配置を決めてあげることで望ましい姿になることができます。
03.ちゃんとしている子をモデルにする
先生が指導すべき言葉というよりも、「ダメでしょ」「いけません」という否定語と似た意味で「ちゃんとしなさい!」と言っている場合があります。
教室の中には、「ちゃんとしなさい!」と言いたくなる子どもと同時に、すでに「ちゃんとしている子ども」もいるはずです。
- 〇〇さんはちゃんと授業の準備ができていますね。□□さんも見習おうね
- 〇〇さんは姿勢がいいですね。おや、今、これを聞いて直した人は自分から気付けた人ですね。その人も素晴らしいです。
などと、「ちゃんとしている子ども」をモデルにして、望ましい状態を広めていきます。
4.目指す子どもの姿
めざす姿は「ちゃんとしなさい!」と先生が言わなくても、子どもがちゃんとすることです。
ただ、教師の仕事は、不十分な姿の子どもをちゃんとさせるようにすることでもあります。
その学年の3学期、3月に「ちゃんとしなさい!」と言わなくても済むように指導していくことを意識しましょう。
そのためには、目の前の子どもが、これまでその学校で指導してきた姿だと割り切って、具体的な指示や言葉かけをしていきましょう。
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