教師のその言葉かけ、大丈夫?///第3回「なんでそんなことするの!」
子どもへの指導は、言葉によって行われます。先生の言葉かけ一つで子どもが変わっていきます。その言葉も効果的なものとそうでないものがあります。
この連載では、先生のちょっと気になる言葉のいくつかについて、解説していきます。ただし、NGワードとして出てくる言葉は「使ってはいけない」ということではありません。
局面に応じては有効な場合もありますし、緊急時などは、言葉を選んでいる余裕はありません。
ぜひ、先生の使っている言葉を意図的・意識的に用いて子どもを育ててほしいと願っています。
1.「なんで(なぜ・どうして)そんなことする(した)の!」
こんなとき、どんな言葉をかけていますか?
- 自分のぼうしをバスケットゴールに投げて引っかけてしまい「先生とってくださ~い!」と言いにきた。
- フェンスに登っていて落ちてしまい、保健室で手当てを受けてしまった。
- 男の子が女の子にカエルを見せて「キャー!」と泣かせてしまった。
- 「説明するまで折っちゃだめだよ」と言って配った折り紙を、もらった瞬間に折り始めてしまった。
よく聞く言葉が「なんで(なぜ・どうして)そんなことする(した)の!」
2.問題の所在
国語の授業で「なんで主人公はこんなことをしたのかな?」という発問をした後の休み時間に子どもが話していたことを思い出します。
「授業で『なんで?』って聞かれたら、怒られた感じがするんだよね」
どういうこと?と思って聞いてみると、「いけないことをしてしまったとき、いつも『なんで(なぜ)そんなことしたの!』って怒られるから。」と言っていました。
それでどうしたの?と問い返すと
「何も答えない。だって『なんで』って聞かれても、何も考えていなかったもん。それで、黙っていたら先生がもっと怒って『黙っていないで答えなさい!』って言うから泣いて、おしまい。」
子どもは教師の思ってもないことをしてしまいます。
それに対して「なんで(なぜ・どうして)そういうことする(した)の!」と、その理由について問いがちです。
でも、当の本人にしたら、理由なんてありません。ただ面白そうだった、ついやってしまった、好奇心、という程度のものがほとんどです。
特に低学年にこの傾向があります。
ですから、まず先生が考えることは、その子どもは、分かっていてやったことなのか、分からずにやってしまったのか、ということを考えてみることです。
3.こんな指導をしてみましょう
先生が「なんでそんなことをしたの!」と言いそうになる前に次のように聞いてみましょう。
上の例の01.や02.は、どちらかといえば分かっていたけどやってしまった例です。
「あのね、こうなるって気付かなかった?」「これで勉強になったね。次から気を付けるんだよ。」と本人の成長を期待します。
加えて、「もう一つ。もしも、今あなたがしたことと同じことをしている友だちがいたら、やめなよって声をかけてほしいな。きっとその友だちはついやってしまっているから。」と声をかけておきます。
03.や04.は、どちらかといえば分かっていなかった例です。
事後の指導では、「あのね、友だちがいやだなぁって思わなかった?」「先生が話していたこと、聞いていましたか?」と、01.や02.と同じように聞きます。
また、話を聞いていない子どもがいる場合は「まだ手に何も持ってはいけませんよ。」「最後まで先生の話を聞いてから、やるんですよ。」「今、先生が話したこと言える人!」などと確認しながら進めましょう。
大切なのは、失敗しても今後どうすればよいか、自分で考える力をつけさせていくことです。
4.目指す子どもの姿
何も悪さをしない子どもは理想の姿です。
一方で、そのような子どもになるには、悪さをした後、同じ失敗をしない子どもにすることを目指さなくてはいけません。失敗から学ぶのが成長です。
そもそも、子どもというのは、やったら危ないことをしてみたり、ちょっとしたいたずらをしてみたりととんでもないことを意味もなくするものです。
初めから、子どもはそんなことをするもの、とんでもないことをするもの、と腹をくくっておきましょう。
そういうことをしながら、叱られ、反省し、成長するのです。
子どもはいつの時代も教師の想定外のことをするものです。想定外のことをするものだ、と想定しておくことで、すべてが想定内になります。
すると子どもの観方も「仕方ないなぁ」「面白いことをするなぁ」とゆとりをもって受け止めることができます。
ただし、次の場合は言葉に関係なく「いけないことはいけない!」とビシッと言いましょう。
☑命の危険に関わること。
☑いじめに関わること。
【参考文献】拙編著『子どもが変わる局面指導』『同Ⅱ』『「局面指導」が学級を変える』(いずれも日本標準)
コメント
コメントがありません