教師のその言葉かけ、大丈夫?///第25回「勝手にしなさい!」

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日本標準

子どもへの指導は、言葉によって行われます。先生の言葉かけ一つで子どもが変わっていきます。その言葉も効果的なものとそうでないものがあります。

この連載では、先生のちょっと気になる言葉のいくつかについて、解説していきます。ただし、NGワードとして出てくる言葉は「使ってはいけない」ということではありません。

局面に応じては有効な場合もありますし、緊急時などは、言葉を選んでいる余裕はありません。

ぜひ、先生の使っている言葉を意図的・意識的に用いて子どもを育ててほしいと願っています。

1.「勝手にしなさい!」

子どもたちがけんかをしています。その仲裁に入ったものの、先生の話をいっさい聞こうとしません。
らちがあかなくなった先生がついこの一言。「もう、勝手にしなさい!」

休み時間夢中に遊んでいて次の授業に遅れて入って来ました。理由を問いただしても子どたちは何も言わず黙って立ったままです。
怒った先生がこの一言。「勝手にしなさい!」

指導を繰り返していても改善されない時などに先生が子どもを突き放すように言ってしまう言葉です。

2.問題の所在

「勝手にしなさい!」と言ってしまうのは、先生が「もうこれ以上言っても仕方ない」と、言葉による指導をあきらめた時が多いようです。

だからといって子どもたちがその後、先生の言った通りに勝手なことをし始めると「もう! 勝手に何をやっているの!」と怒ったりもします。

子どもは、どうしていいのか分からず困ってしまいます。

 

  1. 子どもが不安になる
  2. 勝手に行動してしまう
  3. 先生への不信感が増す

3.こんな指導をしてみましょう

01. 子どもが不安になる

「勝手にしなさい!」という先生の言葉は、「どうぞお好きなようにして下さい。」という額面通りの意味ではない場合がほとんどです。おそらく子どもにさらなる反省を促し、加えて「ごめんなさい」という言葉を引き出し、謝ってくれることを期待しているのだろうと思います。

でも、子どもは、この後どうしていいのか分からず不安になってしまいます。

たとえ「もう一度謝ろうかな…」と思っていたとしても、「また怒られるかもしれないし…」と不安な気持ちは変わりません。

もし叱るのであれば、短くズバッと端的に言うほうが子どもも「はい! 分かりました。」と反省しやすくなります。そして「次から気を付けましょう。」と話し、同じ過ちをしないようにさせることが有効です。

 

02. 勝手に行動してしまう

「勝手にしなさい!」という言葉を額面通り受け取って、本当に勝手に行動する子どももいます。

勝手に動き回られると困るのに言ったのは先生です。
相手の心情を察することが苦手だったり、特別な支援が必要だったりする子どもの中には実際に勝手に動き出す子どもがいます。反抗的な態度でわざと勝手に行動する子どももいます。

理由を聞くと「だって先生が勝手にしろって言ったから、勝手にしているんだよ。」という声が返ってきます。

まずはこの言葉を使わないことがいいのですが、指導するのであれば「こんな時はどうすればいいか分かる?」と子どもに問いかけてみましょう。
分からない場合は先生の方から「こんな時は『ごめんなさい。』『次から気を付けます。』って言うんだよ。」などと適切な行為・行動を教えるといいですね。

 

03. 先生への不信感が増す

多くの子どもは「勝手にしなさい!」と言われても「勝手にしたらもっと怒るだろうな…」と気付いています。

子どもは心の中で「じゃあ、どうすればいいんだよ。」と思ったり、「もう一度謝って済むんだったら、最初から謝って終わりにしてくれればいいのに。」と不満を抱きはじめます。
また、「勝手にしなさい!」という言葉を「先生から放っておかれた…」「見捨てられた…」と思う子どももいます。

そういう子どもと先生の心理的距離は離れていく一方です。

「勝手にしなさい!」と言っても、子どもの行為・行動も先生との関係も良くなりません。この言葉を言いたくなったら、先生自身が深呼吸(具体的には4秒吸って、8秒で吐く)するなど落ち着いて対応してみましょう。

4.目指す子どもの姿

先生の指導に対して素直に聞いてくれる子どもばかりならいいのですが、そうではない所に教育の難しさがあります。

心理学用語に「ダブル・バインド(二重拘束)」という言葉があります。1つのメッセージに矛盾した複数の意味が込められていることを指します。これによって子どもはどう対応していいのか悩み、ストレスになってしまいます。

「勝手にしなさい!」と言うよりも、具体的な先生の願いをきちんと伝えるほうが、子どもも先生の話を聞き、目指す方向へ導いていくことができます。

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