教師のその言葉かけ、大丈夫?///第24回「今日から〇〇禁止!」

作成者:
日本標準

子どもへの指導は、言葉によって行われます。先生の言葉かけ一つで子どもが変わっていきます。その言葉も効果的なものとそうでないものがあります。

この連載では、先生のちょっと気になる言葉のいくつかについて、解説していきます。ただし、NGワードとして出てくる言葉は「使ってはいけない」ということではありません。

局面に応じては有効な場合もありますし、緊急時などは、言葉を選んでいる余裕はありません。

ぜひ、先生の使っている言葉を意図的・意識的に用いて子どもを育ててほしいと願っています。

1.「今日から〇〇禁止!」

休み時間に校庭でサッカーをしている時、チャイムが鳴ってあわてて校舎内へ。ボールが校庭に出しっぱなし。これまでも度々あったのでこの一言。「今日からみんな校庭でのサッカーボール禁止!」

体育館で遊びに夢中になり、授業開始に遅れる子どもたち。何日もそれが続いたので先生がこの一言。「今日から休み時間は体育館禁止!」

ルールや約束が守れない時に学級や学年全体に対して先生が反省させるために言ってしまう言葉です。

2.問題の所在

今回のNGワード「今日から〇〇禁止!」は禁止となる出来事をきっかけにして、関わりのない子どもたちを含めた学級や学年といった集団全体に発せられる言葉のことです。

この言葉によって、無関係の子どもたちに連帯責任をとらせることに問題があります。

指導の一環として個別に「禁止」すべき場合はあるでしょう。しかし、無関係の子どもにとっては先生への不満をためる要因になります。

 

  1. 連帯責任に対する不満を抱かせる
  2. 友だちを責めてしまう
  3. 負い目を負わせてしまう

3.こんな指導をしてみましょう

01.連帯責任に対する不満を抱かせる

学校のルール・きまりを守らないのは一部の子どもです。多くの子どもたちは片付けをきちんとしますし、授業が始まる時には着席しています。

普段からきちんとしている子どもにとって「〇〇禁止」は「どうして私たちまで?」という不満を抱かせるだけです。

きちんとしている子どもたちまで犠牲にするのではなく、「みんなちゃんとボールを片付けてえらいね。」「ちゃんとチャイムと同時に着席してありがとう。すぐ授業ができるよ。」「約束を守ると信用してもらえるよ。」など望ましい行為・行動に着目してほめてあげましょう。

 

02.友だちを責めてしまう

「今日から〇〇禁止!」という言葉は、学級・学年全体を連帯責任として罰をあたえることです。

子どもたち全員が関係したことであれば指導すべき場合もあるでしょう。しかし、一部の子どもによって「〇〇禁止」となれば「自分たちはちゃんとやっていたのに…」「〇〇さんのせいで私たちまで…」と、禁止のきっかけを作った子どもを、口に出さずとも責めるようになります。

「禁止」するのであれば、原則として該当する子どもについてのみ行うことです。

学級・学年全体には、「○○禁止」ではなく、「きまりを守っていない人がいたら教えてあげてね。」「見て見ぬふりは、悪いことをしているのと同じだよ。」「言いにくかったら、後で先生にこっそり教えてくれてもいいからね。」などと話しておけば十分です。

 

03.負い目を負わせてしまう

禁止になったきっかけを作った子どもは「自分たちのせいで…」と周りの子どもに「申し訳ない」と思うようになってしまいます。

また、禁止になるきっかけをつくったのは仕方がないにしても「他の友だちもやっていたのに…」「他の学級(学年)だってしているのに…」と不公平感を抱いたり、「ぼくたちだけじゃないのに…」と被害者意識をもったりします。

全体を「○○禁止」にするよりも個別に「次は気をつけようね。」とその都度、繰り返し話したり、「今、ボールが校庭に出たままだから片付けておいで。」とその場で片付けさせたりします。
また、「次、ルールが守れなかったらボールを禁止するよ。それでもいい?」と事前に伝えておいてもよいでしょう。

4.目指す子どもの姿

子どもの遊びや持ち物・道具などを禁止することなくルールやきまりを守って過ごせていることが理想の姿です。また、仮にルールやきまりを破ったとしても、友だちが声をかけてあげたり、気付いた子どもが後始末をしてあげたりするような学級・学年集団であることも理想です。

「禁止」というのは、子どもにとってとても強い罰です。

ことわざに「盗人にも三分の理」という言葉があるように、ルールやきまりを破ってしまった子どもにも必ずそれなりの言い訳があります。ましてや、何も関わりのない子どもにとっては、言い訳どころか強い不満にしかなりません。

連帯責任をとらせるというのは、今の時代にはそぐわない指導になってきています。

「禁止」という罰によって子どもたちを動かすのではなく、子どもたちのよい姿・よい行動を見て、それを多くの子どもに広げていくような指導をしていきたいですね。

関連する教育情報

コメント

コメントがありません

人気のキーワード

人気特集ランキング