教師のその言葉かけ、大丈夫?///第23回「あなたのためを思って言っているの」
子どもへの指導は、言葉によって行われます。先生の言葉かけ一つで子どもが変わっていきます。その言葉も効果的なものとそうでないものがあります。
この連載では、先生のちょっと気になる言葉のいくつかについて、解説していきます。ただし、NGワードとして出てくる言葉は「使ってはいけない」ということではありません。
局面に応じては有効な場合もありますし、緊急時などは、言葉を選んでいる余裕はありません。
ぜひ、先生の使っている言葉を意図的・意識的に用いて子どもを育ててほしいと願っています。
1.「あなたのためを思って言っているの」
宿題を忘れたり、けんかの仲裁をしたりといった指導の最後に一言。「あなたのためを思って言っているの。」
指導をしたものの子どものふてくされた態度と「でも」「だって」と言いかけた言葉をさえぎって、とどめの一言。「あなたのためを思って言っているのよ!」
先生が指導する時の最後、まとめのように使いがちな言葉です。
2.問題の所在
先生の指導はすべて子どものためです。あえて「あなたのため。」と言う必要はありません。
それでもこの言葉を使ってしまうのは、先生が強く命令して子どもを従わせようとしているか、先生が子どもに良く思われたいという気持ちなどの表れです。
この言葉をかけられて「そうか!ぼくのために言ってくれているんだ。」と感謝する子どもはまずいません。
- 「先生のため」と受け取られる
- 反感を買ってしまう
- 子どもを受け身にしてしまう
3.こんな指導をしてみましょう
01.「先生のため」と受け取られる
「あなたのために言っているの。」という言葉は、子どもによっては「ぼくのためじゃなくて、先生のためでしょ。」と感じ、「先生が都合のいいようにコントロールしようとしている。」と受け止めます。
先生の心理的な誘導に子どもたちは敏感です。このように感じた子どもは先生との距離を取るようになってしまいます。
それよりも「先生はあなたにこんなふうになってほしいんだけどな。」と先生自身のメッセージを伝える方が効果的です。
02.反感を買ってしまう
「あなたのためを思って言っているの!」と言う時は、大抵それまでの指導がうまくいっていない時です。
そんな時にこの言葉を使ってしまうと「きちんと先生の言うことを聞きなさい。」というきつい言葉に聞こえ、反省するよりも反感の方が増してしまい、ますます指導がうまくいかなくなります。
この言葉を使うよりも、「何がいけなかったか分かる?」「手を出しちゃったのがいけなかったよね。」と、指導している理由や根拠を明確にして伝えていきましょう。
03.子どもを受け身にしてしまう
大人としての経験則を伝えたいのは分かるのですが、将来のことや自分を客観視できない子どもにとっては理解しにくい言葉です。むしろ、この言葉を加えることによって、子どもへの命令・指示の印象が強まります。
命令・指示をすればするほど子どもたちは受け身になり、先生の言うことさえ聞いておけばよいという態度になります。
指導した後は「これからどうしたい?」「次がんばろう!」「期待しているよ。」などと子ども自身に指導後の未来を選択させたり、はげましたりするとよいでしょう。
4.目指す子どもの姿
「あなたのためを思って言っているの。」という言葉を言わなくても、子どもが先生の指導に対して素直に聞き入れてくれるのが理想の姿です。これは先生と子どものそれまでの人間関係のたまものです。
「あなたのためを思って…」と言ってしまいそうな態度を子どもが取っているとしたら、それはまだまだ子どもとの関係が不十分だということ。ふだんから子どもとコミュニケーションを取っていくことを心がけましょう。
「人の為(ため)」と書いて「偽(にせ・いつわり)」と読みます。「あなたのため」が「先生のため」になっていないか、考えてみたい言葉です。
コメント
コメントがありません