教師のその言葉かけ、大丈夫?///第19回「聞こえません!」(もっと大きな声で!)
子どもへの指導は、言葉によって行われます。先生の言葉かけ一つで子どもが変わっていきます。その言葉も効果的なものとそうでないものがあります。
この連載では、先生のちょっと気になる言葉のいくつかについて、解説していきます。ただし、NGワードとして出てくる言葉は「使ってはいけない」ということではありません。
局面に応じては有効な場合もありますし、緊急時などは、言葉を選んでいる余裕はありません。
ぜひ、先生の使っている言葉を意図的・意識的に用いて子どもを育ててほしいと願っています。
- 「聞こえません!」(もっと大きな声で!)
- 問題の所在
- こんな指導をしてみましょう
- 目指す子どもの姿
1.「聞こえません!」(もっと大きな声で!)
朝の健康観察で名前を呼んで返事をする時。授業中、指名をして発言をさせた時。トラブルの原因を聞くために個別に話を聞く時。子どもの声が小さかったり、ぼそぼそと何を言っているのか聞き取れなかったりすることがあります。
そんな時、ついこんな一言が出てしまいます。「聞こえません!」「もっと大きな声で!」
2.問題の所在
「聞こえません!」「もっと大きな声で!」という言葉かけが有効に機能するかどうかは、これまでの先生との関係性に大きく関わってきます。
子どもとのよい関係が築けていれば、さほど問題になる言葉ではありません。しかし、そうでない場合、この言葉かけによって先生との関係をさらに悪化させる場合もあります。
具体的には下のような気持ちにさせてしまいます。ちょっと気を付けて使いたい言葉ですね。
- 叱られていると思わせてしまう
- 声に出すことに苦手意識を植え付けてしまう
- 不安にさせてしまう
3.こんな指導をしてみましょう
01.叱られていると思わせてしまう
声が小さい子どもにとって、いきなり「聞こえません! もっと大きな声で!」という言葉かけは、叱られていると思わせてしまいます。
先生にとってはアドバイスのつもりでも、子どもによっては声の大きさだけでなく、自分の人格を全否定されたように捉えてしまう子どももいます。
ですから「先生のところまで声を届けてごらん。」「端っこの○○さんまで聞こえるようにもう一回言ってください。」と聞き手を意識した言葉かけにしてみましょう。
02.声に出すことに苦手意識を植え付けてしまう
子どもの声が小さいのは、経験不足から生じます。ですから「聞こえません!」と言っても大きな声にはなりません。むしろ、声を出すこと自体に苦手意識を植え付けてしまい、もっと声が小さくなってしまいます。
子どもはたくさん意見を言う経験を通してこそ、だんだん声が大きくなるのです。
声が小さな子どもに対しては、全員の前で音読する回数を増やしたり、簡単な質問の時に意図的な指名をしたりするとよいでしょう。
03.不安にさせてしまう
子どもの声が小さい理由の1つに、言い方が分からないという場合があります。
経験不足とも関わりますが、発表する際に、どのように発表したらいいのか分からなくて不安なのです。そういう子どもには「~と思います。」「私は~と思いました。」「~です。」といった話し方(話型)を教えてあげます。
そして子どもの発言に対して否定せずに「うんうん。」「なるほどね。」と受け止めてあげましょう。
(十分な声を出している子どもにとっては、むしろ「話型」によって発言しにくくさせるので、子どもの実態を見極めましょう。)
4.目指す子どもの姿
返事や授業の発言など、堂々と大きな声で発言することが理想の姿です。でも全員がそうなるわけではありません。
大きな声が出せる子どもは、性格もあるでしょうが、それまでたくさん発言してきた結果なのです。
本来、子どもは自分の考えを話したいはずです。なぜなら休み時間には大きな声が出ているではありませんか。休み時間に声が出ている子どもであれば、指導によって声は大きくなります。
「もっと大きな声で!」と言うよりも、話したくなるような授業や発問を考え、学級全体で話をする前にペアやグループで話をするなどの機会を増やしてあげることが大切です。
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