遊びから広がる!特別支援教室のボードゲーム【第6回】ボードゲームがつくる、人を意識する時間

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日本標準

特別支援教室では、子ども一人ひとりの特性に合わせた学びの工夫が大切です。

ボードゲームは、その遊びの楽しさを通じて多様な学びを自然に育むことができる教材ですが、教材の選定や言葉かけ、役割設定などの工夫が重要です。

この連載では、授業で活用するボードゲームの紹介だけでなく、教員の工夫や実践のポイント、記事を書きながら大切だと感じた「気づき」もあわせてお伝えしていきます。

1.ボードゲームの良さって?

学校生活の中で、直感的に行動してしまい、失敗したり損をしたりすることは誰にでもありますよね。
特に友達とのかかわりの中では、そのような「先のことを考えずに動く」ことが、相手に迷惑をかけてしまうことにもつながります。
実際、「先のことを考えるのが苦手」「思いつきで行動してしまう」と感じる子どもは少なくありません。

オンラインのテレビゲームは画面の向こうに相手がいますが、ボードゲームは目の前に人がいて直接やり取りをするため、相手の様子や反応を感じ取りやすいのが特徴です。
特に幼い子どもにとっては、「目の前にいる人」という具体的な存在が、相手を意識する学びにとても役立ちます。

今回紹介する「オートリオ」は、シンプルなルールで4人の小集団が一緒に遊びます。
ゲームを通じて、相手の考えを意識しながら、自分の選択に悩み、相談し、時には失敗も経験しながら、コミュニケーション力や計画力などさまざまな力を自然に身につけられるゲームです。

2.教材(ボードゲーム)の概要 ※実際の商品説明とは異なる場合があります。

基本情報

名称:オートリオ(Otrio)【販売元 株式会社カワダ】
人数:2~4人
時間:約5~15分
対象:低学年~高学年・中学生


ゲームの世界観

シンプルなルールの三目並べですが、コマには「大・中・小」のサイズがあり、重ねて置ける独自構造をもつ抽象戦略ゲームです。
コマである輪っかは、蛍光色の透明でとても子供たちが興味をもちやすいです。
シンプルな見た目の中に、読み合いと選択の奥深さが詰まったゲームです。

ルール

1.各プレイヤーは自分の色のコマを順番に1つずつ配置する。
2.勝ち方は以下の3通り

3.学びの要素

日本ボードゲーム教育協会の研究(引用:https://sites.google.com/view/jbgea/report?authuser=0)を参考にしています。
このゲームから得られる学びの要素と育つ場面をまとめました。

戦略思考:自分と相手の配置を踏まえ、勝ちにつながる置き方を考える場面
逆算思考:最終的にそろえたいラインから、今出すサイズを選ぶ場面
論理演算:サイズの重なりや配置関係を正確に把握して判断する場面
大局観:盤面全体を俯瞰し、有利・不利な流れを見極める場面
判断力
:複数の選択肢から最善の一手を即座に決める場面
情報処理力:残っているコマや相手の狙いを整理しながら考える場面
記憶力(短期記憶):相手がどのサイズを使ったかを覚えておく場面
レジリエンス:狙いを崩されても切り替えて次の一手を考える場面

4.こんな子におすすめ&実践のポイント

先を考えて行動するのが苦手な子

○×ゲームやオセロは2人プレイが多いです。
オートリオも2人で取り組むことができますが、基本的に4人で遊ぶことをおすすめします。
自分以外の3人がどのようにコマを置くかを考える必要があり、自然と相手の動きを意識する力が育まれます。

先のことを考えて行動するのが苦手な子は、自分の手番が終わるとコマで遊んでしまうことがあります。
これは「次に何を考えればいいのかわからない」というサインでもあります。
この段階で叱るのではなく、教員がゲームの実況役となって子どもたちの心の声を代弁することが効果的です。

例えば、「あっ、〇〇さん助けて!あそこにコマを置かないと負けちゃうよ!」「誰も気づいていないけど、次の一手で決まるかも」といった実況を通して、状況に気づくきっかけを与えましょう。

子どもたちがその心の声に反応してプレイできたときは、「〇〇さんがここに置いてくれたから助かったよ!」と気持ちを伝えることも大切です。
自分の行動が誰かの気持ちに影響を与えたことを実感し、相手を意識する興味や意欲が自然に芽生えます。

情報が多いと混乱しやすい子 

オートリオでは「攻める」だけでなく「守る」ことも重要な要素です。
なぜなら、4人プレイのため、自分の番が来るまでに盤面の状況が大きく変わっていることが多いからです。
また、オートリオには勝ち方が3通りあり、多角的な視点で展開を読む力が求められます。

特に終盤では4色のコマが入り混じり、誰がどの勝ち方を狙っているのかが分かりにくくなります。
そのため、途中で混乱してしまう子どもも少なくありません。

そんなときは、「今は赤色のコマに注目しよう」「大・中・小の3つがそろいそうだね」と視点を絞る声かけをすることで、情報を整理しやすくなります。
最初は「自分が勝つこと」や「攻めること」に意識が向きすぎて他者の動きに気づけなかった子も、繰り返し遊ぶうちに「誰が何を狙っているのか」を徐々に把握できるようになっていきます。


この並びを見て、何色がオートリオになっているか判断するのは難しい。

負けると気持ちが崩れやすい子 

オートリオは勝敗がはっきりとつくゲームですが、プレイヤー同士が協力し合いながら攻防を繰り返すことで、負けたという感覚が薄れることがあります。
むしろ、互いに攻めたり守ったりする過程で、対人関係が深まり、「できた!」という達成感や有用感が高まっていくように見えます。

公式の説明書によると、引き分けになることは稀とされていますが、実際には協力的なプレイを意識すると引き分けになる場合もあります。
その際は、「引き分けになったのはみんながよく考えた証拠だよ」と前向きに伝えると、子どもたちは勝敗が決まっていなくても満足げな表情を見せます。

また、ゲームの所要時間が短いため、何度も繰り返し挑戦できる点も大きな魅力です。
前回のプレイの反省点を活かしながら繰り返すことで、戦略や思考力が自然と育まれます。

5.気づき

教員の一言が子どもの視点を広げる

オートリオを行う際、私は教員が意図的にゲームに参加するようにしています。
子どもたちだけで取り組むと、どうしても勝敗に意識が向きやすく、「勝った・負けた」で終わってしまうことが少なくありません。

特別支援教室で行うゲームは、単なる遊びではなく、子どもたちに新たな気づきをもたらす教材として位置付けています。
そのためには、「今、何が起きているのか」「どう考えればよかったのか」といった視点を、さりげなく子どもたちに投げかけることが大切だと感じています。

その役割を担うのが、教員のつぶやきや言葉がけです。
「〇〇さんが勝ちそう」「〇〇さん、助けて!」といった一言が、子どもたちの視点を広げ、相手の動きに目を向けるきっかけになります。
直接答えを教えるのではなく、考え方のヒントを示すことで、子どもたちは遊びの中で気づき、学んでいきます。

オートリオは、教員のかかわり方次第で、勝敗を競うゲームから、人とのかかわり方や考え方を育てる学びの場へと変わります。
その可能性を引き出すために、意図的な参加と声かけを大切にしていきたいと考えています。

新鮮な体験なのかもしれない

人とかかわりながら、相手の表情を見たり、気持ちを想像したり、その場の雰囲気を感じ取ったりする経験は、私が子どもの頃には日常の中に多くあったように思います。
一方、現在の小学生は、生まれたときからスマートフォンやタブレット、ポータブルゲームが身近にあり、楽しいことを一人で完結させやすい環境で育っています。

特別支援教室に通う子どもたちも、もちろんスマートフォンやタブレット、ポータブルゲームが大好きです。
しかし、だからといってアナログなボードゲームが苦手かというと、決してそうではありません。
実際には、多くの子どもたちが楽しそうに取り組みます。

ボードゲームは、必然的に人とかかわる活動です。
順番を待ち、相手の動きを見て考え、時には助けたり助けられたりしながら進んでいきます。
そうした「人とかかわりながら進める時間」そのものが、子どもたちにとって新鮮な体験になっているのではないかと感じることがあります。

目の前にいる人を相手にして得られる気づきや経験は、画面越しでは得にくいものです。
ボードゲームには、勝ち負けだけではない、人と関わる中で育つ大切な学びが詰まっているように感じています。

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