遊びから広がる!特別支援教室のボードゲーム【第5回】想定通りにいかない授業の中で ~子どもの反応から考える~

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日本標準

特別支援教室では、子ども一人ひとりの特性に合わせた学びの工夫が大切です。

ボードゲームは、その遊びの楽しさを通じて多様な学びを自然に育むことができる教材ですが、教材の選定や言葉かけ、役割設定などの工夫が重要です。

この連載では、授業で活用するボードゲームの紹介だけでなく、教員の工夫や実践のポイント、記事を書きながら大切だと感じた「気づき」もあわせてお伝えしていきます。

1.ボードゲームで学ぶ戦略性

トランプの「大富豪」はご存じですか?
大富豪は、トランプを使って手札をいち早くなくすことを目指すカードゲームです。
順番に同じ数字のカードを出しながら、前の人より強いカードを重ねていきます。
ゲームを重ねるごとに立場が入れ替わり、戦略や駆け引きを楽しめるのが魅力です。

小学校高学年くらいになると大富豪を知っている子が増え、休み時間に遊ぶ姿がよく見られます。
大富豪の魅力は、運の要素と考える力のバランスが必要で、カードを出す順番や残し方に戦略性がある点です。
私も今でも好きなトランプゲームの一つです。

ただし、大富豪には「階段(連番)で出せる」「革命で強さが逆転する」「スペードの3が最強」など、地域やグループによってさまざまなローカルルールがあります。
そのため、遊ぶ前にルールの確認が重要です。
特別支援教室の限られた授業時間では、こうしたローカルルールの理解に時間がかかりすぎることがあり、ボードゲームを活用した授業の目的が十分に達成できないこともありました。

そんな中、「ナナトリドリ」は『ネクスト大富豪』系カードゲームとして、大富豪の戦略性をそのままに、短時間で完結するゲームとして作られています。
取り組む人たちが未体験というスタート位置に立てることも魅力の一つです。

2.教材(ボードゲーム)の概要 ※実際の商品説明とは異なる場合があります。

基本情報

名称:ナナトリドリ 【発売元 株式会社アークライト】
人数:2~6人
時間:約5~15分
対象:低学年~高学年・中学生

© 2023 Ateam / Arclight, Inc.

ゲームの世界観

ここは「鳥の王国」。
世界中の鳥たちが集まる「ピーチクパーティー」が、無事に終了したところです。
集まった鳥たちは自分の仲間を見つけて帰ろうとしています。
プレイヤーは“ガイド役”となって、手札を早く出し切る競争を通して鳥たちを帰す役割を担います。
最後まで残ると“ぽんこつガイド”と呼ばれてしまう、ちょっと楽しい世界観です。

子どもたちに人気のかわいい「シマエナガ」やかっこいい「ハクトウワシ」をはじめ、見たことのある鳥が多くいて興味がもちやすいです。
鳥の王国のパーティーという設定でルールの理解も促してくれます。

ルール

ナナトリドリは、“手札を早く出し切る”ことを目指すカードゲームです。
基本の流れは次の通りです。

【準備】
・数字カードをよく混ぜて山札にし、各プレイヤーに8枚ずつ配る。
※このゲームでは手札の並べ替えは禁止です。

【手番での選択】
・自分の番には、〔A:カードを出す〕〔B:パス〕のどちらかを選びます。

〔A:カードを出す〕
・場にカードがないときは、好きなカードを出せます。
・手札で「隣り合っている同じカード」は、何枚でもまとめて出せます。
・直前に出されたカードより強い組み合わせでないと出せません。
➝数字が大きいほど強い(1<7)/数字にかかわらず枚数が多いほど強い(7が3枚<1が4枚)
・直前に場に出ていたカードを「自分の手札の任意の場所に加える」か「捨てる」を選びます。

〔B:パス〕
・カードが出せない/出したくないときはパスをします。
・山札から1枚引いて、「自分の手札の任意の場所に加える」か「捨てる」を選びます。
・全員がパスをした場合、場のカードを全て捨て、最後にカードを出した人(上がったなら次の人)が新しいスタートプレイヤーとなり、好きなカードを出してゲームを続けます。

【ゲーム終了/敗北判定】
・手札を最初に0枚にした人が上がりです。
・最後まで残った人は「ぽんこつガイド」となり敗北。

3.学びの要素

日本ボードゲーム教育協会の研究(引用:https://sites.google.com/view/jbgea/report?authuser=0)を参考にしています。
このゲームから得られる学びの要素と育つ場面をまとめました。

戦略思考:場に出されたカードから「次に何を出すべきか」を考え、上がる流れを作る場面
逆算思考:目標のカード構成を思い描き、そこから今の手札の使い方を決める場面
判断力:同じ数字でも“出す/パスする”を瞬時に選ぶ場面
情報整理:自分・他者の出したカードや回収の有無を整理して次の行動を決める場面
記憶力(短期):直前に出されたカードの数字や構成を覚えて判断に生かす場面
情報処理力:出せるカードの条件と場の強さを総合して判断する場面
レジリエンス:うまく出せない流れでも、他者の動きを見て次の手を探す場面
他者意識:他プレイヤーの手札状況と戦略を想像して行動を決める場面

4.こんな子におすすめ&実践のポイント

先読みが苦手な子


ナナトリドリ、ウノ、大富豪など、「手札をいち早くなくすことを目指すカードゲーム」は、どのカードをどのタイミングで出すかという戦略が必要です。
その中でも「待つ」という戦略がとても重要になります。

先を見通せない子は、自分の手札の中で出せるカードをとりあえず出してしまいがちです。
序盤はうまくいっても、終盤に出せるカードがなくなってしまうことがあります。

そこで、教員と子どもがペアになり、カードを出す前に「今出すとどうなる?」「これを出して、次に出したいカードはある?」など声をかけながら、先を考える時間を設けます。
こうしたやり取りを通して、カードを出す判断基準を身につけることができます。
結果だけでなく、「出す順番」や「カードを使うタイミング」を一緒に言葉にすることで、整理・判断・実行の順序づけも自然に身についていきます。

相手を意識しにくい子 


戦略を考えるときは、自分のカードだけでなく、相手がどんなカードを持っているかも考える必要があります。

ナナトリドリでは、捨てられたカードを使って手札を強くできます。
誰がどの位置にカードを入れたかをよく見ることがポイントです。
数字の小さいカードでも複数枚集まれば強くなるため、相手がどのカードを何枚持っているかを意識させることが必要です。

また、ナナトリドリはカードを並べ替えられないため、捨てられたカードの位置から、どんな組み合わせを持っているかを予想できます。
これらに気づかせるために、教員が一緒にゲームに参加し、考えを言葉にして伝えることが効果的です。

例えば、「7のカードをあそこに入れたから、かなり強くなったかもしれないね」と伝えると、子どもも表情で反応します。
「にこっと笑ったから、当たっているみたいだね」と状況を説明することで、少しずつ相手を意識する力が育っていきます。

勝敗にこだわらない子 


ナナトリドリに登場する鳥たちは魅力的で、「シマエナガ」が特に人気です。
勝敗よりもシマエナガを集めることを楽しんでいる子もいます。
負けても「シマエナガが集められたからよかった」と話す姿も見られました。

こだわりが強く、自分のルールを優先する子どもには、無理にシマエナガ集めをやめさせず、みんなでルールを守って楽しく遊ぶことに目を向けさせます。
先生も一緒に参加し、勝敗による感情の変化を表現することで、「勝つことが嬉しい」という気持ちに少しずつ気づき始めます。

また、教員とペアで遊び、出すカードを子どもに決めてもらうと、自分のカードではないためシマエナガへのこだわりが薄れることもあります。
無理にやめさせるのではなく、少しずつ別の視点に気づかせることが大切です。

5.気づき

相手のアクションに注目する

ボードゲームとオンラインゲームの大きな違いは、目の前に相手がいることです。
ゲームをプレイする中で、人は必ず表情や言葉などで何らかのアクションを起こします。
そのアクションには必ず意味があり、それをどう解釈するかが重要だと感じています。

特別支援教室に通う子どもたちの中には、相手のアクションの意味を読み取りにくかったり、あまり意識できていなかったりする子も多くいます。
だからこそ、大人がそのアクションにどんな意味があるのかを解説し、気づきを促すことが必要です。
ただ教えるのではなく、「相手のアクションに注目する」ことを子どもたちが自然にできるようサポートすることが大切だと思います。

まずはゲームに参加すること

ボードゲームを活用した授業実践にあたっては、どんな子に有効か、どのような支援が必要かを考えながら教材研究を行います。
「こんな子におすすめ&実践のポイント」で紹介した中で、子どもが「シマエナガ」を集めることに夢中になっている姿を見たとき、私は驚きました。
教材研究の段階では、「集めること」そのものに強く惹かれるとは想定していなかったからです。
しかし、その姿は、私にとって子どもたちを知る新たな発見でもありました。

その「シマエナガ集め」に夢中になる様子から気づいたのは、子どもたちが自分なりの楽しみ方や目標を見つけることで、主体的にゲームに向き合っているということです。
勝敗やルールだけでなく、一人ひとりの興味や価値観が遊びに反映されることで、学びの幅は大きく広がります。
中には、ゲームへの参加そのものにハードルを感じている子もいます。
だからこそ、まずはその子なりの参加の仕方を認めることが大切なのではないかと考えるようになりました。

この経験を通して、教材研究とは、ルールや効果を事前に検討するだけでなく、予期せぬ子どもの反応や発見を受け止め、支援の方法を柔軟に調整していく営みなのだと改めて感じています。
「シマエナガ集めはやめなさい」と制止するのではなく、子ども自身が気づくようなかかわりを重ねていくことで、参加の仕方は少しずつ変わっていきます。

子どもの個性を尊重し、ともに楽しみ、寄り添いながら関わることが、よりよい学びの場をつくることにつながるのだと思います。

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