遊びから広がる!特別支援教室のボードゲーム【第3回】授業時間に合わせたボードゲームの選び方

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日本標準

特別支援教室では、子ども一人ひとりの特性に合わせた学びの工夫が大切です。

ボードゲームは、その遊びの楽しさを通じて多様な学びを自然に育むことができる教材ですが、教材の選定や言葉かけ、役割設定などの工夫が重要です。

この連載では、授業で活用するボードゲームの紹介だけでなく、教員の工夫や実践のポイント、記事を書きながら大切だと感じた「気づき」もあわせてお伝えしていきます。

1.ボードゲームはどのように選ぶ?

日本ではボードゲームの“新作”が年間およそ200〜300タイトル発売されているそうです。
既に発売されているボードゲームと合わせると、かなりの数になると思います。
私は、その中から特別支援教室で活用できるボードゲームを以下のように選んでいます。

①興味をもちやすいこと
第1回でお伝えしたように、世界観のあるボードゲームは興味をもちやすいため、子どもたちは積極的に参加したくなります。
興味をもちやすい内容だと、楽しみながら学んだり、コミュニケーションを深めたりしやすくなります。

②短時間で取り組めること
授業時間は限られているので、その中で完結するゲームが適しています。
また、長すぎると疲れてしまったり、途中で飽きてしまったりすることがあるため、短時間で終わるゲームを選ぶようにしています。

③ルールが分かりやすいこと
ルールが簡単で理解しやすいゲームは、すぐに遊べて、参加する全員が楽しめます。
複雑なルールは説明に時間がかかり、混乱してしまうこともあるので、シンプルなルールのゲームを選ぶようにしています。

今回紹介する「いかだの5人」も、以上の条件に当てはまるボードゲームです。

2.教材(ボードゲーム)の概要 ※実際の商品説明とは異なる場合があります。

基本情報

名称:いかだの5人 【販売元 オインクゲームズ(Oink Games)】
人数:1~6人
時間:約20分
対象:低学年~高学年・中学生

ゲームの世界観

海から板を拾い集めて「いかだ」を少しずつ組み立てるバランスゲームです。
人コマを動かし、板カードを重ね、宝箱を積んでいく中で「どこまで積めるか」「次に誰の動きがバランスを崩すか」を見極めるのが重要です。
いかだが崩れそうなときのハラハラ感と、ぎりぎり積み続けられたときの達成感が魅力的です。

私はこのゲームのルールを説明する際に、物語として伝えるようにしています。

「お宝を見つけた仲間たちが帰る途中に嵐に遭いました。大きな波に飲み込まれて、船もお宝もバラバラになってしまいました。生き残った5人の仲間たちは船がバラバラになった板を集めて大きないかだを作り、お宝を持って帰ることにしました。」

板や宝箱、乗組員(人コマ)を動かしながら、このような話をすると子どもたちは「いかだの5人」の世界観に入れます。

ルール

  • 任意の人コマを1つ取る
  • 板カードを1枚とり、既にあるいかだの上に重ねて置き、取った人コマと自分の色の宝箱をその上に置く
  • 他プレイヤーの宝箱を5個落としたら負け

基本的なルールはこれだけですが、活動の目的によってルールを変えていくとよいです。

3.学びの要素

日本ボードゲーム教育協会の研究(引用:https://sites.google.com/view/jbgea/report?authuser=0)を参考にしています。
このゲームから得られる学びの要素と育つ場面をまとめました。

システム思考:重心が偏らないように調整する場面
瞬発力:沈まないよう、どのコマをどこに乗せるかを瞬時に決める場面
大局観:次に動くプレイヤーの選択や、いかだの傾きを先読みする場面
情報処理力:他プレイヤーの配置や、いかだの微妙な傾きを見逃さず観察する場面
判断力:不安定になる危険を踏まえ、安全な配置を選んで被害を最小限にする場面
特徴を捉える力:いかだ上のコマの位置関係や傾きを立体的に把握する場面
レジリエンス:思い通りにいかなくても焦らず、冷静に次の手を考え直す場面
共感力:他のプレイヤーが不利にならないよう、動きを加減して遊ぶ場面
合意形成:宝箱をどこに置くか話し合い、意見の違いを言葉で伝えて折り合いをつける場面
非言語力:他のプレイヤーの表情や反応から、焦りや迷いを感じ取り行動を調整する場面
計画力:残りの宝箱数といかだの傾きを考え、今後の配置順を計画する場面
発想力:バランスが崩れそうな時に、予想外の置き方や新しい方法を提案する場面

4.こんな子におすすめ&実践のポイント

バランス感覚や空間認知が苦手な子



手と目の協応・注意集中・空間把握を楽しく鍛えることが可能です。
このような活動として取り扱う場合、教員と子どものペアで取り組むことが大切です。
操作の手本を見ながら模倣する過程が生まれ、正確な動きや力加減を学びやすくなります。

また、先述した物語設定を加えることで、活動に目的意識が生まれ、子どもは自然と慎重な動作や協力的な態度を引き出されます。
作業的な練習ではなく、物語世界の中で楽しみながら集中力と巧緻性を高められる点が、この教材の大きな特徴です。

物や配置のバランスを考えるのが苦手な子には、「どこに板を置くと崩れるかな?」「この人コマが動いたらどうなるかな?」と一緒に考えてあげる声かけが有効です。
初めは崩れても問題にならない簡易ルールを設定(ペナルティを少なめに、板数を減らす等)し、少しずつチャレンジを増やします。
成功・失敗どちらも「次どうするか考えようね」と振り返りを促すことで、安心して試せる環境になります。

失敗経験に敏感で自信をなくしやすい子 



「ジェンガ」「スティッキー」「キャプテンリノ」など、バランス系のゲームはいくつかあります。
これらのゲームを取り扱うと、「崩してしまうことが怖い」という子が多くいます。
「ゲームだから、まぁいっか」とはならず、崩してしまって注目の視線が集まることを大きな失敗と捉えてしまうのかもしれません。
このような場合は、教員とペアになって、子どもの指示で教員がプレイすることが有効です。
たとえ失敗してしまっても失敗の責任を共有できる、または失敗は教員と半分ことなり、取り組みやすくなります。

慣れてきたら、手番前に教員が「安全に置くならここ、挑戦するならあそこ」のように選択肢を提示し、「どっちがいいと思う?」と問いかけながら進めるとよいです。
宝箱を落としたときも「惜しかったね。どこを変えたらもっと安全だったかな?」と振り返ることで、判断の振り返りがしやすくなります。
この経験が他のゲームにも自信を持って取り組むきっかけになります。

自分の意見を伝えることや他者の考えを受け入れることが難しい子 



ゲームをしていると、だんだんと「みんなで宝箱を置ききりたい!」という気持ちが湧いてきます。
いつの間にか対戦ゲームから協力ゲームへと変化する他のゲームにはない特徴です。
そういうときは、「宝箱を全部置くためにはどうしたらいい?」と投げかけます。
自然と子どもたちは他者を意識した言葉かけや板の置き方をしたりします。

この協力型ルールでは、全員で力を合わせて宝箱を置ききることを目指すため、「誰かがミスしても全体でカバーする」体験ができます。
勝ち負けが個人に直接影響しないことで、負けへの恐れが軽減され、安心して意見を出しやすくなります。
支援のポイントとして、「どうしたらチームがうまくいくか」「みんなで助け合うと楽しいね」といった声かけを意識します。
宝箱を落としてしまっても、「みんなでそれも乗せよう」と意見が出て、いつの間にかルールが変わっていきます。
ルールを柔軟に変える経験が、合意形成や他者理解の力を養うことにもつながります。
自分の意見を伝えたり、他者の意見を受け入れたりする練習の場として活用できます。協力して達成する成功体験が、他者とかかわる意欲を育てます。

5.気づき

協力する楽しさを感じられる

第2回の記事で紹介したボードゲームが好きな教員仲間とプレイしたことのある「ザ・ゲーム」というボードゲームでは、協力してクリアする楽しさを強く実感しました。
それまでボードゲームは勝ち負けがはっきりするものだと思っていましたが、協力して目的を達成するタイプも多くあります。

今回紹介した「いかだの5人」は本来、対戦型のゲームです。
しかし、物語設定を加えることで、敵対していた仲間が「みんなでお宝を持ち帰ろう」と協力する展開が生まれます。
成功したときにはハイタッチして喜びを共有し、失敗しても悔しさを分かち合う
こうした体験は、特別支援教室の子どもたちにとって「他者と気持ちを共有する喜び」を味わう貴重な時間になります。

ルールは変化する

休み時間や放課後の遊びでは、ルールが自然に変化することがあります。
勝手にルールを変えたり、変更を理解できずにトラブルになったりすることも少なくありません。
もちろん、しっかり勝敗を決めるためには「ルールを守る・守らせる」ことが必要です。
しかし、そのルールが今の子どもたちにとって意味があるか、活動の目的に合っているかを考えることも大切です。
「いかだの5人」は、協力的な展開が生まれやすいゲームです。

子どもたちが「協力して宝を置こう」と自然にルールを変えることは、むしろ望ましい姿です。
ただし、ルール変更の際には、参加者全員が納得する「合意形成」が欠かせません。
みんなで話し合って決めたルールのもとで遊ぶことが、安心感と主体性の両方を育てていきます。

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