🎲 特別支援教室・実践連載

遊びから広がる! 特別支援教室の ボードゲーム

ボードゲームは、ただ楽しいだけではありません。勝ち負けとの付き合い方、相手を意識すること、考えを伝えること、自分の得意に気づくこと——。遊びの中だからこそ自然に生まれる学びがあります。特別支援教室の現場での実践から、子どもの姿に合わせた活用のヒントを紹介します。

WHY BOARD GAMES?

特別支援教育で、ボードゲームが
学びの入口になる理由

ルールのある「遊び」の中では、失敗してもやり直せます。教師が教材やルール、言葉かけを工夫することで、子どもが安心して挑戦し、人とかかわり、自分自身を知る機会につながります。

😊
楽しむ主体的に参加する
🌱
挑戦する失敗から切り替える
🤝
人とかかわる相手の存在に気づく
💡
気づく自分と相手を知る
📘
学びにつなげる教室で使える力へ

10 PRACTICES

特別支援教室の実践から学ぶ
ボードゲーム10選

ゲームそのものの紹介に加えて、教員の言葉かけ、ルールの調整、子どもの反応から得た気づきまで。各回のポイントを短くまとめました。

第1回

×ing(バッティング)

楽しむことが1番の学び

3〜6人約15分低学年〜高学年

育てたい力

戦略思考気持ちの切り替え意思決定他者意識

同じ宝石を狙うとかぶって獲得できない心理戦ゲーム。短いラウンドを繰り返す中で、失敗から立て直すことや、相手の視線・行動を手がかりに選択する経験をつくります。

こんなときに:負けると固まる、失敗を恐れて参加できない、相手の視点に立つことが難しい子への支援を考えたいとき。
『楽しむことが1番の学び』を読む
第2回

ナナ

「先生にも苦手がある」から始まる学び

2〜5人約15分中学年〜高学年・中学生

育てたい力

記憶力メタ認知判断力情報処理

手札や場札から同じ数字3枚をそろえる、読み合いと記憶のゲーム。教師も「苦手」を見せられるからこそ、子どもが得意・不得意を勝ち負けだけで判断せず、自分の特徴に気づくきっかけになります。

こんなときに:記憶を使う活動を楽しみたいときや、「苦手=できない」ではなく自分の得意・不得意を知る学びにつなげたいとき。
『「先生にも苦手がある」から始まる学び』を読む
第3回

いかだの5人

授業時間に合わせたボードゲームの選び方

1〜6人約20分低学年〜高学年・中学生

育てたい力

空間把握注意集中判断力合意形成

板カードや人コマ、宝箱を積み上げるバランスゲーム。物語設定や簡易ルールを取り入れながら、手と目の協応、力加減、空間認知、慎重に試す姿勢を楽しく引き出します。

こんなときに:空間認知やバランス感覚、巧緻性を育てたいとき。授業時間や子どもの実態に合わせたルール調整のヒントも。
『授業時間に合わせたボードゲームの選び方』を読む
第4回

マンカラ・カラハ

個別の学びにボードゲームを活かす工夫

2人約10分低学年〜高学年・中学生

育てたい力

戦略思考逆算思考大局観レジリエンス

石を順に移して自分の陣地を空にしていく伝統的なゲーム。自分の石だけでなく相手の盤面にも目を向けることで、「自分中心の視点」から「相手を意識した選択」へと広げていきます。

こんなときに:個別指導でじっくり思考を促したいときや、相手の動きに気づかず自分のやり方だけで進めてしまう子への支援に。
『個別の学びにボードゲームを活かす工夫』を読む
第5回

ナナトリドリ

想定通りにいかない授業の中で ~子どもの反応から考える~

2〜6人約5〜15分低学年〜高学年・中学生

育てたい力

戦略思考判断力情報整理他者意識

手札を並べ替えず、隣り合う同じ数字をまとめて出していくカードゲーム。短時間でも戦略性があり、思った通りに進まない展開の中で、子どもの反応を観察し、支援や授業を組み直す視点を考えます。

こんなときに:「ねらい通りにならなかった授業」を失敗で終わらせず、子どもの反応を次の教材研究や支援に生かしたいとき。
『想定通りにいかない授業の中で~子どもの反応から考える~』を読む
第6回

オートリオ(Otrio)

ボードゲームがつくる、人を意識する時間

2〜4人約5〜15分低学年〜高学年・中学生

育てたい力

戦略思考計画判断力他者意識

大・中・小のリングを使った三目並べ型の戦略ゲーム。目の前の相手の選択や盤面全体を意識しながら、「今置きたい場所」だけでなく、その先や相手の考えまで見通す経験につなげます。

こんなときに:思いつきで動いてしまう、先の展開を考えることが苦手、対面で相手の存在を意識する経験を増やしたいとき。
『ボードゲームがつくる、人を意識する時間』を読む
第7回

ヒトトイロ

感情の動きが育む子どもの成長

2〜6人約10〜20分低学年〜高学年・中学生

育てたい力

共感力他者意識対話力メタ認知

お題から連想する色を選び、みんなの感じ方を比べるコミュニケーションゲーム。はっきりした勝敗よりも、「同じものを見ても感じ方は違う」という気づきと、違いを安心して受け止める時間を大切にします。

こんなときに:正解を探して固まってしまう、言葉で説明することが難しい、自分と他者の感じ方の違いに気づいてほしいとき。
『感情の動きが育む子どもの成長』を読む
第8回

花火 / HANABI

協力型ゲームでつなぐ子どもたちの心

2〜4人約30〜40分高学年・中学生

育てたい力

他者意識推理力対話力計画力

自分の手札だけが見えない状態で、限られたヒントを頼りに仲間と花火を完成させる協力ゲーム。「相手は何を知りたいか」「このヒントにはどんな意図があるか」を考える場面が自然に生まれます。

こんなときに:相手の意図や非言語的な情報を捉えることが難しい子に、ルールのある安全な場で「他者視点」を経験してほしいとき。
『協力型ゲームでつなぐ子どもたちの心』を読む
第9回

ツインイット!(Twin It)

得意から広がる学び

2〜6人約10〜15分低学年〜高学年・中学生

育てたい力

セルフマネジメント感情調整特徴を捉える集中

同じ絵柄のカードを素早く見つける反射神経型ゲーム。大人より子どもの方が得意な場面も生まれやすく、普段の学習では見えにくい「速さ」「見分ける力」「感覚の鋭さ」を、本人の強みとして捉えるきっかけになります。

こんなときに:苦手さばかりが目立って自信を失いやすい子の「できる」「得意」を見つけ、学びへの手がかりにしたいとき。
『得意から広がる学び』を読む
第10回

ワードスナイパーキッズ

子どもが自ら言葉を見つけ、探しにいくきっかけづくり

2〜6人約10分低学年〜中学年

育てたい力

語彙検索見立てる力判断力セルフマネジメント

ひらがなとお題を手がかりに、条件に合う言葉を素早く探す言葉あそびゲーム。「知っている言葉」を頭の中から取り出し、文脈に合うかを判断して発話するプロセスを、楽しみながら経験できます。

こんなときに:語彙はあるのに必要な言葉がすぐ出ない、言いたいことを言葉にするまで時間がかかる子への活動を考えたいとき。
『子どもが自ら言葉を見つけ、探しにいくきっかけづくり』を読む

TEACHER'S VIEWPOINT

遊びを「学び」に変えるのは、
先生のひと工夫

同じゲームでも、子どもの実態や目標によって使い方は変わります。「楽しい」を守りながら、無理なく学びにつなげていくことが連載を通した大切な視点です。

1
子どもの姿からゲームを選ぶゲームありきではなく、「どんな経験をつくりたいか」から教材を考えます。
2
ルールを調整する時間、人数、難易度を実態に合わせて変え、「できそう」と思える入口をつくります。
3
教師も一緒にプレイする考え方を言葉にしたり、失敗する姿を見せたりすること自体が支援になります。
4
結果ではなくプロセスを認める勝敗だけでなく、切り替えられた、相手を見られた、相談できた変化を言葉にします。
5
振り返りを次の生活へつなぐゲームでできたことを、学習や友達とのかかわりでどう生かせるか一緒に考えます。

FROM PLAY TO LEARNING

連載を通して見えてくる、学びの広がり

10回の実践には、遊びを入口にして、自分・相手・言葉へと学びが広がっていく流れがあります。

遊ぶまず「楽しい」から
挑戦する失敗してもやり直す
相手に気づく目の前の人を意識する
自分を知る得意・苦手・感じ方を知る
広げる対話・言葉・日常へ

FROM THE CLASSROOM

特別支援教室の現場から

東京都の小学校教諭。

通常学級での担任経験に加え、知的障がい特別支援学級の担任も経験し、現在は特別支援教室を担当。子どもたちが「楽しみながら成長する」姿勢を大切にし授業をしてきた。

特別支援教室ではボードゲームを取り入れた授業を実践。自身も、言語処理や聞いて理解することが得意ではなく、教員になってからその特性に気づいた。

その経験から、児童の学び方の多様性についても重視し、提案してきた。

本連載では、実際の授業での教員の工夫や言葉かけ、子どもの反応、そして実践を振り返る中で得られた「気づき」を紹介。

遊びの中だからこそ、
見つけられる力があります。

気になる子どもの姿から、まずは一つの実践をのぞいてみませんか。ゲームの選び方だけでなく、教員のかかわり方や授業づくりのヒントが見つかります。

育てたい力から、もう一度探す