遊びから広がる!
特別支援教室の
ボードゲーム
ボードゲームは、ただ楽しいだけではありません。勝ち負けとの付き合い方、相手を意識すること、考えを伝えること、自分の得意に気づくこと——。遊びの中だからこそ自然に生まれる学びがあります。特別支援教室の現場での実践から、子どもの姿に合わせた活用のヒントを紹介します。
特別支援教育で、ボードゲームが
学びの入口になる理由
ルールのある「遊び」の中では、失敗してもやり直せます。教師が教材やルール、言葉かけを工夫することで、子どもが安心して挑戦し、人とかかわり、自分自身を知る機会につながります。
今、気になっている子どもの姿から探す
「この子には、どんな活動が合うだろう?」という視点から、関連する実践記事へ進めます。
特別支援教室の実践から学ぶ
ボードゲーム12選
ゲームそのものの紹介に加えて、教員の言葉かけ、ルールの調整、子どもの反応から得た気づきまで。各回のポイントを短くまとめました。
×ing(バッティング)
楽しむことが1番の学び
育てたい力
同じ宝石を狙うとかぶって獲得できない心理戦ゲーム。短いラウンドを繰り返す中で、失敗から立て直すことや、相手の視線・行動を手がかりに選択する経験をつくります。
こんなときに:負けると固まる、失敗を恐れて参加できない、相手の視点に立つことが難しい子への支援を考えたいとき。
『楽しむことが1番の学び』を読むナナ
「先生にも苦手がある」から始まる学び
育てたい力
手札や場札から同じ数字3枚をそろえる、読み合いと記憶のゲーム。教師も「苦手」を見せられるからこそ、子どもが得意・不得意を勝ち負けだけで判断せず、自分の特徴に気づくきっかけになります。
こんなときに:記憶を使う活動を楽しみたいときや、「苦手=できない」ではなく自分の得意・不得意を知る学びにつなげたいとき。
『「先生にも苦手がある」から始まる学び』を読むいかだの5人
授業時間に合わせたボードゲームの選び方
育てたい力
板カードや人コマ、宝箱を積み上げるバランスゲーム。物語設定や簡易ルールを取り入れながら、手と目の協応、力加減、空間認知、慎重に試す姿勢を楽しく引き出します。
こんなときに:空間認知やバランス感覚、巧緻性を育てたいとき。授業時間や子どもの実態に合わせたルール調整のヒントも。
『授業時間に合わせたボードゲームの選び方』を読むマンカラ・カラハ
個別の学びにボードゲームを活かす工夫
育てたい力
石を順に移して自分の陣地を空にしていく伝統的なゲーム。自分の石だけでなく相手の盤面にも目を向けることで、「自分中心の視点」から「相手を意識した選択」へと広げていきます。
こんなときに:個別指導でじっくり思考を促したいときや、相手の動きに気づかず自分のやり方だけで進めてしまう子への支援に。
『個別の学びにボードゲームを活かす工夫』を読むナナトリドリ
想定通りにいかない授業の中で ~子どもの反応から考える~
育てたい力
手札を並べ替えず、隣り合う同じ数字をまとめて出していくカードゲーム。短時間でも戦略性があり、思った通りに進まない展開の中で、子どもの反応を観察し、支援や授業を組み直す視点を考えます。
こんなときに:「ねらい通りにならなかった授業」を失敗で終わらせず、子どもの反応を次の教材研究や支援に生かしたいとき。
『想定通りにいかない授業の中で ~子どもの反応から考える~』を読むオートリオ(Otrio)
ボードゲームがつくる、人を意識する時間
育てたい力
大・中・小のリングを使った三目並べ型の戦略ゲーム。目の前の相手の選択や盤面全体を意識しながら、「今置きたい場所」だけでなく、その先や相手の考えまで見通す経験につなげます。
こんなときに:思いつきで動いてしまう、先の展開を考えることが苦手、対面で相手の存在を意識する経験を増やしたいとき。
『ボードゲームがつくる、人を意識する時間』を読むヒトトイロ
感情の動きが育む子どもの成長
育てたい力
お題から連想する色を選び、みんなの感じ方を比べるコミュニケーションゲーム。はっきりした勝敗よりも、「同じものを見ても感じ方は違う」という気づきと、違いを安心して受け止める時間を大切にします。
こんなときに:正解を探して固まってしまう、言葉で説明することが難しい、自分と他者の感じ方の違いに気づいてほしいとき。
『感情の動きが育む子どもの成長』を読む花火 / HANABI
協力型ゲームでつなぐ子どもたちの心
育てたい力
自分の手札だけが見えない状態で、限られたヒントを頼りに仲間と花火を完成させる協力ゲーム。「相手は何を知りたいか」「このヒントにはどんな意図があるか」を考える場面が自然に生まれます。
こんなときに:相手の意図や非言語的な情報を捉えることが難しい子に、ルールのある安全な場で「他者視点」を経験してほしいとき。
『協力型ゲームでつなぐ子どもたちの心』を読むツインイット!(Twin It)
得意から広がる学び
育てたい力
同じ絵柄のカードを素早く見つける反射神経型ゲーム。大人より子どもの方が得意な場面も生まれやすく、普段の学習では見えにくい「速さ」「見分ける力」「感覚の鋭さ」を、本人の強みとして捉えるきっかけになります。
こんなときに:苦手さばかりが目立って自信を失いやすい子の「できる」「得意」を見つけ、学びへの手がかりにしたいとき。
『得意から広がる学び』を読むワードスナイパーキッズ
子どもが自ら言葉を見つけ、探しにいくきっかけづくり
育てたい力
ひらがなとお題を手がかりに、条件に合う言葉を素早く探す言葉あそびゲーム。「知っている言葉」を頭の中から取り出し、文脈に合うかを判断して発話するプロセスを、楽しみながら経験できます。
こんなときに:語彙はあるのに必要な言葉がすぐ出ない、言いたいことを言葉にするまで時間がかかる子への活動を考えたいとき。
『子どもが自ら言葉を見つけ、探しにいくきっかけづくり』を読むザ・ゲーム
友達と共に目標を達成するための協力
育てたい力
数字カードを具体的な数字で伝え合わず、仲間と相談しながら全員で出し切ることを目指す協力型ゲーム。相手の言葉のニュアンスや状況を想像し、「待つ」「譲る」「力を合わせる」経験につなげます。
こんなときに:自分のペースで進めがち、友達に相談することが苦手、失敗への不安が強い子と、共通の目標に向かう経験をつくりたいとき。
『友達と共に目標を達成するための協力』を読む注文の多すぎるゲーム バーガー
記憶の仕方は、ひとつじゃない
育てたい力
ハンバーガーショップの店員になり、読み上げられた注文を仲間と協力して覚えるゲーム。復唱・分類・イメージ化など、多様な覚え方を試しながら、自分に合った記憶の方法に気づくきっかけになります。
こんなときに:聞いた情報を覚えることが苦手、覚え方が分からない、失敗を自分の責任と感じやすい子と、安心して試行錯誤したいとき。
『記憶の仕方は、ひとつじゃない』を読む遊びを「学び」に変えるのは、
先生のひと工夫
同じゲームでも、子どもの実態や目標によって使い方は変わります。「楽しい」を守りながら、無理なく学びにつなげていくことが連載を通した大切な視点です。
子どもの姿からゲームを選ぶ
ゲームありきではなく、「どんな経験をつくりたいか」から教材を考えます。
ルールを調整する
時間、人数、難易度を実態に合わせて変え、「できそう」と思える入口をつくります。
教師も一緒にプレイする
考え方を言葉にしたり、失敗する姿を見せたりすること自体が支援になります。
結果ではなくプロセスを認める
勝敗だけでなく、切り替えられた、相手を見られた、相談できた変化を言葉にします。
振り返りを次の生活へつなぐ
ゲームでできたことを、学習や友達とのかかわりでどう生かせるか一緒に考えます。
連載を通して見えてくる、学びの広がり
12回の実践には、遊びを入口にして、自分・相手・言葉へと学びが広がっていく流れがあります。
🧑🏫 特別支援教室の現場から
東京都の小学校教諭。
通常学級での担任経験に加え、知的障がい特別支援学級の担任も経験し、現在は特別支援教室を担当。子どもたちが「楽しみながら成長する」姿勢を大切にし授業をしてきた。
特別支援教室ではボードゲームを取り入れた授業を実践。自身も言語処理や聞いて理解することが得意ではなく、教員になってからその特性に気づいた。その経験から、児童の学び方の多様性についても重視し、提案してきた。
本連載では、実際の授業での教員の工夫や言葉かけ、子どもの反応、そして実践を振り返る中で得られた「気づき」を紹介。
遊びの中だからこそ、
見つけられる力があります。
気になる子どもの姿から、まずは一つの実践をのぞいてみませんか。ゲームの選び方だけでなく、教員のかかわり方や授業づくりのヒントが見つかります。
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